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2012.07.03 Tuesday

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2012.07.03 Tuesday

大きな顔



46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 15:17:57.35 ID:hEZkjSY50

初めて書くから怖いかどうか文章力が無いから勘弁してくれ・・・
 
昔メンヘラな彼女と付き合ってた時の話だが・・・
 
付き合って大体1年半くらいの時だった・・・
彼女と一緒にベットで寝ている時
元彼女がイキナリ叫びだした・・・

コレが始まりになったのは後から知ったんだが
 
元彼女は叫びだしたと思ったら
「顔・・・顔・・・・」と震えるような声で連呼していた。

隣にいた俺は全く何がなんだか分からず
「コイツは何を言っているんだ?」馬鹿かと思いながらも
一応、「なに?」と聞いた。


 
彼女は怯えながら「顔・・・顔・・がある」と意味不明な事を・・・
 
明らかに不機嫌に「は?何言ってるの?」と言うと
元彼女は冷蔵庫の方向を指を指して
「顔がある・・・・大きい顔がこっち見てる」と叫んだ。。。。
 


59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 15:25:41.27 ID:hEZkjSY50

元彼女がメンヘラなのは十分分かっていたので俺は又わけの分からない事を・・・
と思いながらも話に付き合い・・・
冷蔵庫の方向へ歩いて行き回れ右をして元彼女に「何処にいるの?ココ?」と指を刺した
 
彼女はただ首を振って違うことを伝えてくる
 
更に俺は指の場所を変えていくと元彼女が大きく首を縦に振った・・・・
 
俺はおもむろにスエットを脱ぎ元彼女が見えるらしい顔に向かってチンコを振り回し
「オラー舐めろやオォォウ」と言ってみたりチンコをしごきまくったりした。
多分30秒くらいやってたと思う・・・
 
すると元彼女が「・・・・もういないよ・・・・」と言ってきた
いないならいないって言えよコノ馬鹿女・・・・


64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 15:35:46.90 ID:hEZkjSY50

俺は・・・「絶対遊ばれていると確信した」

メンヘラはそういう女だ・・・・

その後彼女いわくそのデカイ顔は見てないとのことだった。
 

約半年後
俺は、仕事とメンヘラに疲れて寝ていた・・・・

彼女は何か雑誌を読んでいたと思う
 
俺が寝てると
 
「ねぇ・・・・ねぇ・・・ねぇ」
 「ねぇってばぁぁぁぁぁぁーーーーーー」
 
正直・・・ビックっとして起きた俺の頭は寝ぼけて「???????」
だるいなぁぁっと思いながら「なに?どうしたの?」と眠たさMAXですという態度で声をかけると
 
元彼女「聞こえた?」
 
俺「なにが?」
 
「聞こえたでしょ?」
 
何言ってんだコイツ?
 
俺「聞こえない・・・・おやすみ」と言って又寝ようと目を閉じた
 
すると、何秒か後にさっきより大きい声で
「ねぇ今のは聞こえたでしょ?」と又起こされた
俺「うん・・聞こえたよお前のでかい声が・・・うるさいよ」
 


67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 15:41:54.29 ID:hEZkjSY50

元彼女「違う声が聞こえるんだってば」

俺「は?」

元彼女「なんかよく分からんけど、女の声が近くで聞こえる」

俺「は?なんて?」(全く相手にしてないけど早く終わらせて寝たかった)

元彼女「なにしてるの?って何回も言ってくる気持ち悪い」
 
おいおい俺からしたらお前が十分気持ち悪いよ・・・・・
と普通に思った事が口から出てしまった・・・・怒りだす元彼女www
 
何とかなだめて、ソレは幻聴だから・・・・だって俺聞こえてないしwww

俺「今も聞こえる?」

元彼女「聞こえない」

俺「ほら、幻聴幻聴大丈夫!!!」

元彼女「うん・・・・・・・」

俺「おやすみ」

元彼女「おやすみ」
 

「ギャーーーーーーーーーーーーーー」
 


69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 15:51:38.29 ID:hEZkjSY50

最強にビックっとしたことを今でも覚えている
イキナリ叫びだす元彼女・・・・俺は飛び起きて彼女をというか声の方を見ると
 
元彼女が顔を抑えてのた打ち回っている・・・・・
意味が分からない・・・一瞬で目が覚めて・・・
元彼女に「なに?なに?どうしたの?」と話掛けるも元彼女は叫ぶだけで・・・・
 
何度か話掛けていると

元彼女が「手・・・・・手・・・・」

手を握る俺

元彼女「ちがーーーーーーう」
 
なんだ?なんだ何が違うんだ?と軽くパニくる俺
 
元彼女「手が顔を触ってくる〜〜〜〜〜」
 
意味が分からない全く持って意味が分からない

俺「え?」
 
元彼女「顔の上に手が乗ってる!!どけて!どけて」
 
・・・・・そもそもお前が自分の手で顔を触ってる?手で隠してる?みたいな感じじゃんw
 
元彼女「ちがーう私の手以外の手が顔を触ってるぅぅぅ」
 
「グホぉ」
 
とイキナリ体がエビゾリみたいになって苦しそうになった

流石にびっくりして元彼女を抱えて「大丈夫?オイ!!大丈夫?」と声を掛けた

 

71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:03:22.98 ID:hEZkjSY50

その後少し元彼女はのた打ち回った後・・・収まったらしくてヨダレだ出した顔で
ハァハァいいながら犯された後の女のような感じになっていた。
 
俺「結局なんだったの?」

元彼女「寝てたら顔の上に手がかぶさってきて・・・・はぁはぁ
    ・・・・それで俺君の手かと思ってどけようと思って
    どけようと思ったけど腕がないなーと思った!
    それで目が覚めて俺君の方を見たら隣で寝てて手もあって・・・・・
    その時手が頭の当から口に指が当たる方向で被さって
     コレは俺君の手じゃないって思って顔を触っても手がなくて・・・・
    でも手が被さってる感覚はあって・・・・・・
    俺君が起きて声掛けてくれたのは覚えてるけどその後は記憶が無い・・」
 
俺「・・・・うん・・んで?」
 
元彼女「それで今・・・・なに?なに?怖い・・・・最近声が聞こえたり・・なに?」

俺「いや・・・分からんww俺が聞きたいわwww幽霊って言いたいの?」

元彼女「わからん・・・・でも前大きい顔あったでしょ?アレが関係あるのかな?」

俺「俺がチンコで除霊したやつ?」

元彼女「・・・うん」

俺「wwwww幽霊なんかいるわけないwwwwww幻覚wwwwwうはww」

元彼女「・・・・・・・」
 


77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:15:45.12 ID:hEZkjSY50

それからしばらくは何も無かった・・・・・・
普通に元彼女も落ち着いて生活していた・・・・・
 
休みの日家で、掃除をしているときで俺がクイックルワイパーを担当していた
家では犬を2匹飼っていってたまにシッコをフローリングでするので結構念入りに
掃除してる時に犬が俺の方向に向かって2匹まとめて吠え出した・・・・
 
何?何?こいつらご主人にむかってと思っていたら
 
彼女「俺君ダメーーーーーーーーーーーーーーーーー」
とありえない音量で叫ばれたwww
 

元彼女「出た・・・出た・・・・後ろ・・・・・こっち来て・・・」

俺「は?」

元彼女「今、俺君の後ろになんかおる・・・・・」

その間も俺のほうへ向かって吠える犬っていうか俺の後ろに向かって吠えている・・・
 
流石にwwゾクっとしたwww
 


元彼女「俺君いいからこっち来てそっちはダメ・・・・・」


78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:22:17.92 ID:hEZkjSY50

正直幽霊なんて信じてはいないけど・・・・ビビッタwwww

ゆっくり元彼女の方へ歩いて行き彼女の隣についた時振り返った
 
「・・・・・・・・・・なにもいないじゃんwwwww」
 
元彼女「え?おるよ見えないの?」

その間も犬は吠えている・・・・・

俺「うん!全く何もみえないwwww」
 
見えないと確信した時俺は絶頂に強気になったwそしてビビッタことに腹が立った
 

前回同様 パンツを脱ぎ捨て彼女に場所を確認して思いっきりオナニーして
「おい舐めろよ!!オオゥゥ!!」
 
すると犬の鳴き声が終わり

後ろから彼女が「俺君もういない」
 
また、俺はチンコで除霊したったwwww
 
だけど・・・・そこから加速するとはwwwwwww


81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:30:26.20 ID:hEZkjSY50

それから、その幽霊とやらは彼女の前に頻繁に現れるようになったw
今考えると!もともといたけど彼女が見えるようになったのかとも思う!
 
以下幽霊目撃情報
 ☆女らしい 髪の毛は長め 顔は良く見えない 白のワンピース 裸足 
 ☆どこでも現れる

家が原因と思いホテルに行っても、霊感が強い夫婦の家に行っても
(夫婦の家に行った時は、朝彼女に幽霊さん見えた?と聞くと出てきてなくて
 ゆっくり寝れたと言っていたが、なんか夫婦の奥さんが夜中みたらしいww
 どんな感じだったの?と聞いて紙に書いてもらったら彼女と全く同じwwキメェェww
 奥さんには、女としか言ってないwww)
 

 

82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:38:11.13 ID:hEZkjSY50

諦めて・・・家に帰宅・・・
相変わらず頻繁に出てくる・・・
しまいには彼女が白目を剥いて呼吸困難になる事もシバシバ
 


84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:45:07.70 ID:hEZkjSY50

色々2ヶ月くらい悩まされて少しずつ俺も本当なのかと思ってきた!
 
対処の方法も無い・・・・
流石にイライラしてきた・・仕事にも集中できない
 
そこで彼女に言った「呼べ」

彼女「は?」

俺「そんなに出てくるならそこらへんにいるだろ呼べ」

彼女「呼んで出てくるわけないじゃん!呼んでどうづるん?」

俺「ん?家のせいじゃないなら何の目的?質問しようずwwなに?って」

彼女「会話なんか出来るわけ無いじゃんwwwしたことないしww」

俺「怖いん?wwwwびびっとん?」←実は俺もびびってたw

彼女「怖いよ見たくないもん気持ち悪い」

俺「だから解決するんだよ!!呼べ」

彼女「うん・・・・ってかなんて呼んだらいいの?」

俺「幽霊さん出てきてくださいって言え」
 


彼女「幽霊さん幽霊さん出てきてください」
彼女「幽霊さん幽霊さん出てきてください」
彼女「幽霊さん幽霊さん出てきてください」
 
彼女よ「出てこいやびびっとんかぁぁぁぁぁ」
 
ついに彼女が切れたwwww


86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:50:41.75 ID:hEZkjSY50

そこから彼女がわけの分からない事を叫び とにかく切れてたwww
 
叫びすぎて隣に迷惑なので彼女を止めたwwwww


俺「出てこんねwwwwww」

彼女「うん・・・のど痛・・・・出たwwww」
 
マジでコントのような感じだったwwww
そのおかげで見えない事もあり俺は強気だった
 
彼女「どうしたらいいん?」

彼女は出てきてしまってビビッてたwwしかも目の前に初めて立ったらしい・・
 
俺「よし!何がしたいか聞けw」

彼女「貴方は何がしたいのですか?」
彼女「貴方は何がしたいのですか?」
彼女「貴方は何がしたいのですか?」
 
彼女「お前は な に が し た い の か っ て き い て ん だ よ」

イライラしてきたらしいww
流石切れやすいメンヘラww切れたら何も怖くないって感じになるw
 


88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 16:59:07.30 ID:hEZkjSY50

そうしたら彼女が一瞬顔が変わった・・・・・・
 
俺「どうした?なんか言った?」

彼女「うん・・・」

俺「なんて?」

彼女「あなたが何してるの?って」

俺「は?」

彼女「意味分からんwwコイツ馬鹿じゃない人の家でwww」
 
また顔が変わった・・

彼女「・・・・コイツの家らしいよ・・・」

俺「なに?コイツの家?」

彼女「うん・・そう「いってる」
 
俺「ココはあなたの家ではないので出っていって成仏しろって言えww」

彼女「うん」
 
彼女「お前が出て行けってwww」

俺「俺らが?wwwwwうぜwwww」

彼女「違う・・・私らしい」

俺「え?俺は?」

彼女「わからん」
 
俺「死人は成仏しろって言えwww」

彼女「うん」
 
彼女「・・・・・・・しんでないってw」

俺「何コイツキモわかってないん?wwwww」


92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:04:06.44 ID:hEZkjSY50

俺「結局何がしたいか聞けwww」

彼女「うん」
 
彼女「私が憎くて殺した言って・・・・ガクブルしてたw」

俺「は?マジなにそれww」
 
また、チンコを出して除霊をしたwww
 
彼女「消えないよ・・・・」
 
正直消えない時の恥ずかしさは半端なかった・・・・
何してんだろっておもったw

チンコでも除霊できなく困ったw
 
俺「全く意味分からん・・・」「どうしたらお前は満足するかって聞け」

彼女「うん」
 
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 
ビビッタww本当にビビッタ
 
イキナリ彼女が叫び発狂しだした・・・もうキチガイだったww

 

93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:07:11.68 ID:hEZkjSY50

結構な時間発狂して何故か俺が殴られる殴られる・・・・・・
 
俺「おい!とりつかれたか?出て行け!出て行け!」
 
バチーン
 
俺「・・・・・・・・」ビンタを食らった

俺は完全停止したw意味が分からん・・・え?ビンタ?
 
彼女「お前なんで子供おるんや?誰やこの女」

 

94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/02(月) 17:13:42.72 ID:zyOsrHVw0

面白く見てて何なんだけど、こんな細かいセリフ覚えてんの?

 

96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:17:31.77 ID:hEZkjSY50

>>94
全部ではないwwチョイチョイ違うけどコノ話結構いろんなところでしてるから覚えてるw

メンヘラとは別れて新しく彼女作る時に・・
メンヘラの話と幽霊の話で優しさアピールしてる
 
高確率でいい人になれるw
 


95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:15:36.66 ID:hEZkjSY50

更に思考が停止する・・・意味が分からない・・・・子供?え?誰?
 
俺「ちょっちょ意味わかんない!なになに?分からないからwww」

彼女は俺にすがりながらヒックヒック何ながら

彼女「幽霊にどうしたらお前は満足するかって聞いたらお前(彼女)を殺して
   俺君と幸せになりたいと・・・言った瞬間女の後ろから子供が顔を出したらしい・・・・」
 
俺「んなアホなwww俺子供できたことないしwwストーカーの幽霊なんじゃない?」

彼女「知らんよ・・・・・・」
 
俺「俺の知り合いか聞け」

彼女「うん」
 
彼女「しってるって」

俺「?」
 
俺「俺と付合ってた?」

彼女「付合ってない」
 
俺「意味分からんwww」

彼女「うん」
 
その時彼女がイキナリ住所を言い出したその住所は
その時住んでいた場所の近くの地域だった・・
 
俺「何それ?」

彼女「分からんなんかズットその住所言ってる」

 

97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:24:59.06 ID:hEZkjSY50

元彼女はその当時は、17歳で家出少女だった!
後輩がナンパして凄い綺麗な子で家もかなり遠い場所で
その住所を知っているはずが無い・・・
 (彼女の親とは既に会って了解済みね)
 
はっきり言って凄く気持ち悪くなってきた・・・・・
 
俺「名前を言えって言って」

彼女「う・・・・・・消えた」
 
そのあと彼女に散々絞られた・・・・でも俺は全く身に覚えが無かった

子供の推定は2〜3歳くらいらしい・・・
だから彼女と付合ってる時では、無かったことっと
一応、俺も遊び人だったと知っていたので一応彼女は納得してくれた・・・
 
その後、幽霊がでて話しかけても幽霊が返事する事は無かった・・・・
 
が!俺は納得できない!凄く何なのか知りたい!

それに、彼女の呼吸困難が収まらないので
本格的に霊媒師みたいなのに見てもらおうという事になった!
 


98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:29:07.80 ID:hEZkjSY50

実際地域の関係もあるだろうが霊媒師とか探しても中々居ないww

寺などに電話をしてみたけど返答は
厄払いなどはするが幽霊とかは出来ないと言われる

ネットなどでも散々探したが!気軽に行ける距離には一切無い!
 
頭がおかしいと思われる覚悟で知り合いにも聞いてみたがみんな分からないと・・・
 

そんな中彼女母親の知り合いで、とても霊感の強い人がいると情報が入ったので
即効連絡をして、会う予定を決めた!!


 
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:40:50.11 ID:hEZkjSY50

場所は結構な田舎で石の階段をひたすら上っていく結構ツライ・・・・

その場所について見ると普通の一軒家で離れに小さい部屋があり
そこが除霊などに使ってる部屋らしい・・
だいたい6畳くらいだった・・・正直胡散臭いwwwww
 
彼女にお前は一切話しはするな!
もし嘘つきで適当な事言われて金だけ取られて
何も解決しないとかだったらイヤだから俺が全部話しはする!と言っていた
 

霊媒師「初めましてごめんなさいね上がってくるの大変だったでしょ?」

俺「いいえ!大丈夫ですww」
 
霊媒師「で?どうされました?」

俺「半年くらい前に大きい顔が彼女に見えたらしくてそれから頻繁に女の霊が見えるみたいです」

霊媒師「うんうん!そうですね・・・ハイハイハイハイ」
 
そこから霊媒師が話しはじめた・・・
 
霊媒師「あなた達子供おろしていますよね?男の子・・・大体1年前ですかね?」

彼女「はい」

俺「え?男の子?」

バチンッ殴られる・・・・
 
霊媒師「まず大きい顔から説明しますね。ソレは顔ではないです
    あなた達の後ろにたくさんの水子の霊が居ます・・
    ソレが彼女さんには顔に見えたのでしょう。
    もちろんあなたたちの子供さんも居ますし一番近くに居ますよ
     それで、大きい顔の原因ですけど、あなたたちはその子を供養してないですよね?」

彼女「はい」

霊媒師「水子の霊がそんなについてきているという事は
    あなた方は必要以上にお寺などに行ってますよね?」
 

 

101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 17:50:23.75 ID:hEZkjSY50

彼女「はい」

霊媒師「ですよね!その水子達は親も知らないで無くなってます!
    それにもちろんあなた方のようにお参りにきてもらえればいいですが
    来てくれない子もたくさんいます。
     そんな子たちがあなた達を親と勘違いしてついてきてます。」
 
そこから・・・例の霊のはなしになります
 
霊は霊の存在が分かります。

ソレはエネルギーというかまぁそんな感じです

あなた達はその水子の霊のエネルギーがとても強く霊に存在を感じさせるのです

そこで、その女が現れたのです!
 
俺「はぁ・・・・なんかあたってるけど・・意味わかんね・・・」と思った
 
俺「んで、その霊は何なんですか?今いますか?」

霊媒師「ん〜今は近くには居ませんというよりも来ていません賢いのですかね?
     でも、とても大きな怨念を感じます。。。正直払えないレベルの怨念です。」
 
彼女「なんでその霊は、付きまとってコッチに迷惑掛けるんですか?」
 
霊媒師「あぁソレは彼氏さんの女関係です」
 


102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 18:00:33.63 ID:hEZkjSY50

え?うはwwwwwえ?マジwwwwってか何普通に暴露してんのwww
正直いろんな意味でパニックww
 
彼女が睨んでくるwwwwwマジやめてwwwでも言えないwwww
 
霊媒師「ちなみに霊というより生霊です・・・・・・
    しかも尋常じゃない怨念なので、払っても払っても戻ってくる可能性がありますし
    正直私に取り付く可能性がありますので、払いきれるか分からないですがやってみます。」
 
俺「はぁ・・・・・・」
 
除霊?開始・・・テレビで見るような感じではなかった・・
ただ目を閉じて呪文を聞いてるようなたまに何かで殴られてるww結構痛いww
 
霊媒師「終わりました・・・はぁはぁ!なにか聞きたい事はありますか」
 
俺「もし、また出たらどうしたらいいですか?」
 
霊媒師「一応清めた塩を渡しておきますのでソレを盛ってください。
    本当にどうにもならない時は私がいきます。
    ただ今の状態で、除霊をしても戻ってくる可能性が強いし・・
    無駄にお金を貰うのも私もイヤなので・・とりあえず様子をみてください。」
 
俺「なんで俺の事なのに俺には霊とか見えないんですか?」
 
霊媒師「彼氏さんは、そんな存在を馬鹿にしてますよね?完全否定というか・・
    あなたには多分一生そのような存在を見る事はないでしょう。」
 
俺「はぁwww」


104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/07/02(月) 18:07:45.26 ID:hEZkjSY50

という感じで霊媒師の家から帰宅ww

帰った瞬間現れるwwww

彼女全く意味無いと怒り出すwww
 

盛り塩→皿が綺麗に真っ二つwww何故か塩が部屋全体に飛び散るww
 
彼女は相変わらず苦しそう・・・・・・
 
霊媒師呼ぶことになって電話する・・・
 
霊媒師「もしもし・・かかって来ると思いました・・・
    昨日その霊が私のところに来ました・・
      近くで接した所正直自分の手に負える相手では無いと・・・・・」
 
おいおい断るってありかよwwwwww
 

おわり
 

その後。。。

結局彼女と別れることになって・・・

なんかメンヘラかものすごい事になって
その家は引き払い別々に住んだ結果彼女のところには一切出てないとの事です。
 
最後時間がなくてメチャクチャ適当になりスイマセン
 
それでは、歯医者に行ってきますwww
 

 

2012.01.22 Sunday

封じ。

アパートに帰り着くと郵便受けに手紙が入っていた。

色気のない茶封筒に墨字。

間違いない泰俊(やすとし)からだ。

奴からの手紙もこれで30を数える。
今回少し間が空いたので心配したが元気そうだ。宛名の文字に力がある。

部屋に入り封を切る。封筒の文字とは裏腹に手紙の方の文字には乱れがあった。
俺は手紙から目を離し、何かを思い出そうとした。



俺は慣れない運転でいささか疲れを感じ始めていた。

山深い田舎のクネクネと曲がりくねった道。

緑が美しく思えたのは最初の一時間程だ。

助手席の泰俊(やすとし)は運転を代わってくれる素振りを見せない。
いつもはコイツが車担当(運転)だ。
堪らず少し広くなった道脇に車を止め、どうした?って顔の泰俊に言った。

「運転代わってくれ!!」

「康介(こうすけ、俺)・・俺は今、免停中だ。法を犯すことは出来ない。」

と言って合掌しやがった。
こいつは寺の長男で将来は坊主だ。そして色んな意味で頼りになる。

「くぅ〜。お前。スピード超過で一発免停喰らっといて言う言葉か?
 それが?それでも坊主か?」 とくってかかる俺。

「俺はな反省してるんだよ。康介。二度と過ちは犯すまいってね。
 そんな俺をそそのかすお前は何だ?恥を知れ!!悪魔め。」
と涼しい顔で前方を指差す。

そこにはOOOまであと4キロの古びた看板。OOOは今回の目的地だ。

「ここまで来ておいて投げ出すとは・・・情けない奴だよな。
 仕方ない。お前の為に俺は再び罪を犯そう。」とため息をつきやがった。

俺は一言・・「もういい。運転する。」 としか言えなかった。
なんだかんだでメチャクチャ長い4キロを走破して俺達は目的地の町(村?)に着いた。
ここでもう1人の友人であり、ここの出身者でもある友明(ともあき)と落ち合うのだ。


約束の場所は小学校の跡地。すぐにわかった。
会う人みんな年寄りばかりで、20代の若者は俺達だけって勢いで
思いっきり過疎化って感じだが、みんな明るく朗らかだった。

友明がニヤニヤ笑いながら近づいて来る。

「お疲れさん。お?康介が運転か?んじゃもう少し休憩して出発するか?」

俺 「え?ここじゃねぇの?」 

友明 「ん?ゴールはこっから一時間くらいの山の中。」 

「友明・・運転・・」

「俺、ペーパー。危ないよ(笑)」

やっぱり今回の旅は調子が狂う。
いつもは俺等三人が何らかの役割分担をし、お互いワイワイ楽しんだものだ。

だが今回に限り泰俊はダンマリだし、友明は何となく緊張している。



騒いでいた俺は運転で疲れ果てている。なんか違うだろ?
そう。 今回は観光でもバイトでもナンパでもない。


俺達は魔物を「封じ」にここへ来たのだ。


事の始まりは春、まだ少し寒い頃だったと思う。
部屋で泰俊とゲームだったかDVDを観ている時に、友明が訪ねて来た。

珍しく神妙な面持ちでチョッと力を貸してくれないかって言う。
なんだ彼女と喧嘩したのか?と言うとニカッと笑って
「違うって」と言い直ぐに真顔に戻った。ちょっと驚きを感じて話を促すと、

「俺の地元の寺の住職が危篤なんだよ。」 と話し出した。

何でも友明の家はその地元の寺を支える四家の内の一家で
寺の住職が亡くなった時にある「御役」というものが代々あるとの事だ。

御役には四家の家長が着くのだが
友明の親父さんは病気か怪我で御役を務める事が出来ず
息子の友明が代行する事となったそうだ。

しかし正式な家長ではないので介添え人を三名まで付ける事が許されるのだと言う。

しかし御役自体、特殊な行為を伴うらしく、

地元では介添え人が見つからず
異例中の異例という事で部外者の協力も可という事になったらしい。

俺は真っ先に思ったことを口にした。

「まさか、今の時代に坊主のミイラ造るの手伝えっての?」

友明は笑いながら、

「まさか・・・死人相手ならまだ楽。相手は魔物だよ。
 住職の死肉を喰いに来る魔物の封じが御役なんだ。」
と恥ずかしそうに言った。

しばらくの沈黙・・・・

俺 「嘘だろぉ〜」 

 
友明 「いや、マジ。お前等は何もしなくていい。
    多分ただ見ているだけで終わると思う。
    ただ多少決まり事があるからその話合いを他の三人の御役として
    その通りに動けばいい。俺達が魔物に襲われる事は絶対にない。
    最悪、熱出して2〜3日うなされるだけ。」


正直、なんかこうもっとアクションがあると思った。

こういう場合決まって御札で守ったり、呪法があったり、結界が・・。
そんなものはこれと言ってないそうだ。

ある場所から魔物が出てくるから、それをある方法で封じるだけ。
俺達介添え人はその場にいるだけでOK。単なる魔物見物だ。

ただし、見える見えないには個人差があるという。
俺は好奇心で行くことを決めた。
多少、霊感のある泰俊が考え込んでいたので少し不安になったが
結局、泰俊も行く事になった。

介添え人は俺達二名と決まり、友明は先に地元へ帰るという。



後日、地元へ帰る友明を駅まで見送りに行った。
友明は俺達に連絡したら直ぐに来てくれと念を押して電車へと乗り込んだのだ。

俺はとっさに 「あ、相手の名前なんてぇの?」と聞くと
友人は歪んだ笑顔を向けただけだった。


駅からの帰り道。泰俊は終始無口だった。

この男の性格は決して暗くない。実家が寺だとは信じられないくらい明るいのだ。

「友明の奴なんで魔物の名前教えなかったんだ?」

空気を読めない俺は、多分、泰俊が無口になった原因の真ん中ストライクをズバリ聞いてみた。


泰俊は俺の顔をマジマジと見つめて、

「お前は馬鹿そうに見えるが、いざという時には頼りになる。
 今回のアイツの頼み事はお前が要になるかもな。」

「俺ってそんなに馬鹿そう?てか友明は危険はないって言ってたじゃん。」

俺が頼りにしている相手からの思いがけない信頼にちょっとビックリしながら言うと、

「あいつは女には嘘をつくが、俺達には嘘をつかない。
 でも危険がないならなんで地元の人間が見つからない?
 俺達の業界でも忌まわしきモノの名は口に出さない。

 アイツが名前を教えなかったのは俺達の仲をもってしても
 はばかられるモノだからとしか考えられん。
 坊主が死んで出てくる奴だ。坊主の端くれの俺には相性が悪すぎる。」

「泰俊。じゃ〜なんでお前この話受けたんだよ?
 お前の話聞いたらマジでヤバそうじゃん。今からでも断るか?」

「お前な・・友明は俺達が行くって事になって初めて帰る決心がついたんだよ。
 アイツは地元の決まりから逃げられないみたいだからな。
 お前は知らないが俺は友明を裏切れない。」

「俺だってそうだよ。友明を助けたい。(80%は好奇心)でもお前はヤバいだろ?」

「今この決断で俺は親友を失いたくない。」

「泰俊・・・」

こいつの一言が俺の80%の好奇心をそのままそっくり80%の
いや85%の恐怖心へと変化させていった。


魔物見物。ちょっとした肝試し程度しか考えていなかった。
無口になる俺。

「お前って単純馬鹿だよな。実際。本当にからかい甲斐があるよ。」
いつもの笑顔で泰俊が言う。

「馬鹿にするな!」 とやり返し膨れてみせる俺。

話題は昼飯と女のことに移ったが俺の中の恐怖は何となく残ったままだった。

山門のあるチョッと立派な寺だった。
入り口の前の広場に車を停め歩いて行くと寺内から60代くらいの男の人が出てきた。

「友明君、彼等が介添え人の方達かな?」

友明がそうだと応えて紹介しようとすると、その人は片手を挙げて制し
「名前なんてお互い知らなくていい。」 と続けて言う。

「ここでの事は原則、他言無用。
 しかし喋りたければ自由にしていい。

 どうせ誰も信じないからね。

 私自身、未だ見えないから。
 でも音だけは誰でも聞こえる。だからソレがいる事はわかるんだよ。
 さて、他の二人の御役が住職を見ているので、私は君達にこれからの事を簡単に説明する。
 

 この事の『云われ』や経緯は『封じ』が終わってから
 ゆっくりと友明君からでも聞きなさい。じゃ〜こっち来て。」

この人の言い方には最初「カチン」ときたが
後から俺と泰俊の身を心配してくれていた事を友明から聞いて知った。



連れて行かれたのは寺の左側の裏にある石造りの古い井戸。
木製の棒が口を塞ぐように滅茶苦茶に置かれ、その上に竹製のカゴの様な物で覆われていた。



この井戸に魔物が封じられていて、無秩序と秩序で封をしているとの事だった。

しかし、この封は住職が死んで七日目の夜に解け
中から魔物が住職を喰いに出てくるそうだ。

要するに直接の俺達の仕事は新しく封をする事で
新しい木製の棒を井戸の口にランダムに置き
その上にカゴ(カゴメというらしい)を被せるだけ。



ここで木の棒はキャンプファイヤーの時のように歪な格子状に置くのだが
一段目に七本。二段目に七本というふうに全部で七段組むように言われた。

ただし六段目のみ八本の棒を使うように指示され
その八本目の棒一本のみ特別で何かの呪いが仕掛けているとの事だった。

残りの四十九本の棒はこの一本を護るダミーだ。
ちなみに何段目にその一本を入れるかは毎回異なり
しかも一度封をしたら後は古くなって朽ちるにまかせるだけだという。



次回の封は次の住職が亡くなる前にして、亡くなると再度、封をする。
住職が亡くなる前後二回のみ井戸に
封じをするという事らしい。道理で木の棒が新しい訳だ。

一つ疑問に思ったので聞いてみた。

俺 「この封じをする時は、俺達居なくて良かったんですか?」

おじさん「いきはよいよい、帰りは怖いってな。
     この封じは住職が死ぬ三日前に造ったもので
    「死蓋」(しにぶた)と言ってあまり力が無いんじゃよ。

     棒も一本足らん。

     住職が死んで力が強くなった魔物を再び封じる為にワザと破らせるものだ。
     そこで君達に組んでもらうモノは「生蓋」(いきぶた)
     

     これは本当に出られんようにする封じじゃ。これが大切。」



「生蓋」をするのは「御役」の四人の中の一番若い者の仕事で当然
友明な訳で俺達な訳だ。大体の俺達の役割は理解出来た。

多分いや絶対一番重要な役だ。(友明はともかく俺達二人はサポートだが・・)

おじさん「それじゃ本堂に行って住職を拝んでこよう。それからメシだっ。」

夕食前に遺体を見るのは勘弁だったが
普通に棺桶に入っていてチョクで見ることはなかったし
他の二人の御役は座ってお経を唱えていた。


今日で死後六日目の遺体。


想像しただけで食欲は無くなったが
それを察した友明が「ちゃんと防腐処理してるから思ってるより綺麗だよ」とボソッと小さく言った。


寺の座敷でくつろいでいる所へ、年配の女の人が握り飯と味噌汁
簡単なおかずを差し入れてくれた。

俺等を見ると
「産助殿(さんすけどん)ご苦労さんです。」と口々に言う。

俺 「さんすけどんって何?」

当然、友明に質問。答えは何故か泰俊から返ってきた。

「多分、産助殿だろう。お産を助けるって意味だと思う。」

友明 「その通り。そんでやっぱ変って思うだろ?」

俺 「何が?」

友明 「だって魔物封じする俺達が産助殿だぜ?」

俺 「あぁ・・でも、そうか・・」 考えがまとまらない。

泰俊が握り飯をつかみ中に入っている梅干を取出して食べ始めた。

泰俊「封じの経緯なんか聞きたい所だがヤッパ終わってからなんだろ?」 

梅干の味がしたのか顔をしかめた。

友明 「ああ。余計な知識が無くても出来る事だし。
    アイツみたいに好奇心の塊みたいなヤツは知ったら知ったで何かしそうだしな。」

ワザと俺を見ずに友明が言う。確かに。
自分でも納得したが、心の中にいまだある不安というか恐怖というか
微妙な感情に俺は気付いた。



とにかく明日の夕方まで暇な訳で、(友明は忙しいみたいだが)
俺と泰俊は寺内を散歩して暇をつぶした。

そんな時、本堂の仏さん(住職)に線香をあげていると
泰俊が天井の方をジィッと見上げている。

俺も興味を引かれ見てみると横木が渡してあり、そこには木の札が二十数枚張られていた。

「おお〜これは!!」と思っていると

「代々のこの寺の住職の名前じゃよ。」 
と後ろから声がした。井戸へ案内してくれたおじさんだ。

「右端が初代。この封じの当事者の名だが
 なかなか達筆で読めんだろ?確か今回亡くなった住職の二十六〜七代前だ。」
言うだけ言うとおじさんは廊下へ消えた。

名札を数えたが二十四枚しかなかった。案外アバウトでホッとした。

だが、泰俊はその初代という人の名札を凝視したまま動かない。




「知ってる人?」

「ああ・・」

「ええぇ〜マジ?」

「・・・お前はチョッと引っかかり過ぎ!ワザとかよ?」 笑う泰俊。

今の泰俊には余りにも似合わない笑顔だった。



辺りも暗くなり俺達の部屋にはすでに布団が敷かれてあった。
友明は他の御役達と交代で寝ずの番だそうだ。部屋を出るとき

「今夜あたりから『音』が聞こえ出すけど気にすんな。」 とだけ言って行った。

寝て辺りが静かになると直ぐに『音』が聞こえた。

『音』というより『鳴き声』だ。

「ミャーミャー」「ニューニュー」みたいなまるで子猫の鳴き声で
猫大好きな俺は思わず跳ね起きる。単純に暇だから遊ぼうと思ったのだ。

俺の膝を泰俊の手が押さえる。痛いくらいに力が入っていた。

「猫じゃねぇ。絶対に外には出るな。」 押し殺したような低い声。

一瞬寒くなり、俺は布団に戻った。

甘ったるい、何とか助けてやりたい気分になる子猫の声だ。

多分猫好きの人にはわかるだろう。

『声』さえ気にしなければ何という事もなく気がつくと朝になっていた。
多分車の運転疲れもあったのだろう。



顔色の悪い泰俊はすでに起きていた。

いや一睡も出来なかったそうで、「お前のキモの太さは凄い。」 
おはようの挨拶の前の一言だった。


昼になり、いよいよ夕方になって俺はこの件でこれまで一番の衝撃に見舞われた。


例の井戸の前の大木に人が吊り下げられていたのだ。
正確に言うと住職の遺体が。

落ち窪んだ目。

アゴを縛られているが微妙に開いている口。

青白く背中一面黒く変色した体。

どこか物見遊山的な気分は消し飛んでしまった。




俺達は魔物を『封じ』に来たのだ。



住職の遺体には、藁で編んだ「しめ縄」の様なヒモが無数にかけられ地面へと伸びていた。
地面は黒く汚れていて多分住職の内容物だと思うが、その割、嫌な臭いはしていない。

周りにはCの字型に薪が積まれ
魔物が出てきたら隙間口を塞ぎ、住職の遺体を降ろして一緒に燃やすのだそうだ。

そして遺灰と住職の遺骨の一部を井戸に入れ封をする。  

これで終わり。

単なる変わった火葬に付合わされているだけかも知れない。
地元の人は確かに嫌だろう。



夜の8時頃、それは起こった。

また子猫の声が聞こえたかと思うと
竹カゴのせいで見えにくいが井戸の上にある封の棒が
下から突き上げられる様に小さく振動を繰り返している。

「ガシャガシャ」と音がするのだ。

しばらくすると1本、2本と棒が地面に落ちだし
その数が20本を越えた頃、今度は竹カゴがバリバリと音を立てた。

まるで中のモノが外に出ようとしている様に。


息を止めて見守っていると
「バリバリッ」と一度大きな音をたて竹カゴが地面へと転がった。

「ゴクッ」っと生唾を飲み込む俺。

「ミューミュー」と声が相変わらず聞こえ
ポトポトと何かが落ちる音がして子猫の声はだんだんと
吊り下げられた住職の方へ近づいていく。

姿は見えないが、そこには確かに何かがいる。これが魔物だろう。


今更ながらに気付いたのだが、子猫の声は一つではない。
何十匹分という声が聞こえている。

俺は幸いにもかがり火で照らされた地面に何も確認出来ない。見えないのだ。


いつの間にかあれ程見て見たいと思っていた魔物の姿を見ずに済んで
「ホッ」としている自分に気が付いた。

同時に隣に泰俊がいる事に気付き、顔をのぞき込む。

泰俊は今まで見た事もない表情をしていた・・・・。


俺はとっさに腕を取って後ろに下がらせ
泰俊は「ハッ」と気付き、俺に「すまん」と礼を言った。

俺 「お前、まさか見えたのか?」

泰俊 「ああ・・・こいつはヒドイ・・・」

言ってるうちに遺体を吊るした大枝がメキメキと音を立てだした。
思わずそちらを見る泰俊。だがすぐに目を伏せる。
俺も見たが、風も無いのに遺体がクルクル回りだし
垂れ下がったヒモが不気味に動いているだけだった。


しばらくして、友明を含む4人の「御役」がCの字の口を薪で塞ぎだした。

塞ぎ終えると、お経や鉦を鳴らし住職を吊るしたヒモの元を切って遺体を地面に落とした。「ドシャッ」 何かが潰れた音だ。
ふと遺体損壊とかで捕まるんじゃないかと思ったな・・・。


4人の御役は住職の遺体の上に木屑や薪、藁などを入れ火を付けると
思いのほかすぐに大きくなり、いつの間にか子猫の声も絶えていた。

これからの仕事は遺体が骨になるまでの火の番で、目の前で直に人を焼いている。

なるほどトラウマになりそうだ。



明け方近くなってようやく火葬が済み、俺達は火に酔ったみたいにトロンとしていた。
多分睡魔もあったと思うが、しかし眠いとは思わなかった。
木製の箱にあらかたの遺骨を納め、残った骨は灰と一緒に集められ俺達の所に持って来た。

「さて、これで最後じゃから頼むの。」 おじさんの声。

うなづく友明が遺灰を受け取り井戸の中へ撒いた。
残りの3人の御役はお経を唱え続けている。
俺と泰俊は友明の所へ行き封の手伝いをし、20分で終わった。



魔物封じ終了。



井戸のかたわらに立ちすくむ泰俊を見ながら
俺はビビリも入ったが楽勝と思っていた。辺りは既に明るくなってきている。

本堂の辺りで声が上がり見てみるとメシの用意をしてくれた女の人達が
今度は大量の塩を持ってやって来た。
自分達も含め庭一面を清めるのだそうだ。

布の袋に入った塩を2つもらい、1つを泰俊に渡そうと近づく。泰俊はまだ井戸に居る。


またさっき見せた表情になっていた・・・・


「おい!!泰俊!」 思わず叫ぶ。

ゆっくりとこちらを向き、

「封は終わったんだよな?なぁ・・多分・・あれは・・康介・・女の子がいた・・」

目を閉じ頭を抱え、

「4〜5歳位の裸の女の子。だけど左肩から1本、右の脇腹から3本、蜘蛛の足が・・・
 飛び出していた・・。それでな・・左の首筋に蜘蛛の頭がついてるんだ・・・。
 井戸の横に居て・・アイツも一緒に封じたんだよな?・・。」

俺 「まだいるのか?」

泰俊 「いや・・もう居ない・・竹カゴを被せたら消えた。」


胃がキューッと締め付けられた。

俺 「だったら・・大丈夫だよ。」 何の根拠も無い返事。

その夜、泰俊は高熱を出した。


2日間、友明の実家に世話になり、俺達は帰路に着いた。

帰りは友明も一緒で今回のせめてものお礼という事で運転をするとの事。
助手席の景色はまた違うなと余裕を見せる俺。
市内に入りシートベルトを握り締め
「ブレーキ!ブレーキ!!」と叫ぶことになるとは、この時は思ってもいなかった。(笑)


帰りの車内で元気になった泰俊は自分が見たモノを絵に描き俺達に説明した。
友明は魔物の姿形を知っていて「本当に見ちまったのか・・」と同情していた。

コンビニのおにぎり大の赤ん坊の頭に人の手足や蜘蛛の足が無作為に付いているらしい。

下あごの元辺りから生えていて動きは鈍く、よく引っくり返っていたそうだ。
目は何故か皆閉じていて、口は本来ある場所には無く
あごの先の裏に付いていてヤツ等が転んだ時に良く見えたそうで
鳴き声は俺も知っている子猫の様な声。

そんなのが何十匹も住職の遺体に取り憑いていたそうだ。



そして火葬が始まると一斉に鳴くのを止め
目を見開いて血の涙を流しながら御役達を見つめていたと言う。
これを聞いて友明は言葉を失ってしまった。



何故か泰俊は井戸の横に居た『女の子』の話はしない。俺もふれなかったが・・。




俺等は一応、無事に帰りつけたと思っていた・・・。



俺的に一番危険だったのは
帰りの車内であって『封じ』の一件はちょっとサプライズなイベントみたいなものだ。

俺の部屋で厄払いの酒盛りをする事にした。

なんと言っても、今回の『封じ』の「云われ」を友明に聞かなくてはならない。
それで全て終わる。


俺と泰俊は焼酎、友明は缶ビールで乾杯をし友明が語りだす。

「俺も全て詳細に知っている訳じゃない。
 俺等『御役』4家には、『封じ』は昔話みたいにして伝わっていて
 家長にならないと全ては解らない。」

左手にビールを持ち替えツマミをあさる。

「今回、俺は親父の代理だった訳で『封じ』の作法しか新しい情報はない。
 作法の話をしても泰俊は面白いかもしれないが康介は暇だろうから
 『御役』に伝わる昔話をしようと思う。」



江戸時代の初め頃の話。大きな戦があってその村の男衆も大勢亡くなった。
働き手を欠き、残された村人は餓えに苦しんだという。

それでも戦が無くなり次第にもとの生活に戻っていった。
こういう事があったからか、この村では多産で網で獲物を捕らえて放さない

『蜘蛛』を大切にする様になったそうだ。

(今でいう「コガネグモ」で地元では「ダイジョウ」と呼んでいた)

そしていつしか蜘蛛の世話は必ず男がし
女は触れてはならない。蜘蛛を殺すことは御法度などの村律(そんりつ)
『村の掟』が出来たという。


ある時、この村の名主の家で婚礼があった。
隣村から名主の次男坊を婿に迎えたのだ。

若夫婦は仲が良く、妻はすぐに身籠った。
名主夫婦も大変に喜び孫はまだか?と言わぬ日がない程だったという。
しかし、隣村から来た婿はどうしても蜘蛛に馴染む事が出来なかった。

ある日、婿が涸れ井戸のほとりを歩いていると見た事も無い大きな蜘蛛がそこにいた。

彼は、これ程の蜘蛛だから家人に見つかれば必ず自分が世話をさせられると思い
蜘蛛を殺して井戸へと捨ててしまう。

それを運悪く身重の妻に見られてしまう。

妊婦のいる家での蜘蛛殺しは御法度であり不吉と考えられていたので
妻は夫をなじった。詰め寄る妻をなだめていたが
揉みあっている最中に誤って妻も井戸へと落ちてしまった。

すぐに助けを呼んだが妻は井戸の中で亡くなっており
惨いことに落ちた衝撃かどこかにぶつけたか腹が裂け赤ん坊が外へ出てきていた。

女の子であったが助からず当時は、水子は供養されること無く
そのまま井戸の底に埋められたのだという。


それからしばらくたった夜に「猫の声の怪異」が始まった。

聞く人が聞くと「まんま、まんま」と言っているという。

その内、夜、寝ている間に体を虫に何ヶ所も齧られるという家人が増えていった。


傷口は治りが遅く、ヒドイ痛みが伴った。
そしてこういった出来事は決まって「猫の声の怪異」があった晩であった為
若夫婦の水子が空腹の余り化けて出ているとの噂が流れていったそうだ。

そしてとうとう婿もこの怪異に遭ってしまう。
しかしいつもと違い、齧られるというより喰われると言った方がいい状態で出血もひどかった。

だが、婿本人は痛みすら感じておらず
これ以降他人がこの怪異に遭うことは無くなったが
婿は少しづつ・・少しづつ・・喰われていった・・・。



名主の老夫婦は一人娘を失ってから婿に辛く当たり
怪異の対象が婿1人になると婿を実家に追い返した。

ところが婿が居なくなると怪異の災いが村中へと広がってしまった。

明らかに婿を捜している様子だったので、村のために婿を呼び戻す事になったが
隣村の名主は息子が魔物に喰われていくのを黙って見てはおれず申し入れを断った。


困り果てた老夫婦は遠方の寺に使いを出し怪異を鎮めてもらうよう懇願した。
知らせを受けた寺の者達は、このような怪異を鎮める法を知らず困っていると
ちょうどこの寺に逗留していた旅の雲水がこの役を買って出たという。


雲水が使いの者と村に着いたときには村人ほとんどが怪異に遭い
疫病のようになって死に絶えていたそうだ。

使いの者は恐れ慄いて逃げ出そうとしたが
何とか怪異の元の名主の家まで案内したのだが、老夫婦も既に亡くなった後だったという。

雲水は怪異の正体を探るため、結界を張りそこで一晩を過ごした・・・。


数日が過ぎ、雲水は隣村の婿のもとへ現れた。婿と親夫婦の前で雲水は語る。



「婿殿はタチの悪い蜘蛛を殺されたのであろう。
 彼の村が蜘蛛を祭るを知り遠方より流れ来たる古の悪霊が蜘蛛に取り憑いたモノです。
 貴方は良い事をされた・・・。
 

 しかし肉より離れた悪霊は今度は貴方の奥方に取り憑き貴方を陥れようとしました。
 しかし貴方に付いている神がそれを許さず、奥方ごとまた地獄へ送り返されました。

 ここで不憫なのは奥方もさることながら御腹の赤子です。

 死した蜘蛛にも子があったようで、今、魂は混じり合っています。
 井戸は冥界に通じ、魔物を産む産道となって人の子が親を慕うが如く
 蜘蛛の子が親を喰らうが如く起こったのがこの怪異です。

 貴方はこれらの魔物の親として祭らねばなりません。
 死した後喰われ、御霊を安んじ四方四家を建て鎮まるまで・・。」



その後、婿は雲水の指導の下、井戸で『願』を立て僧籍に入ったという。




コップを持ったままだったのに気付き、俺は焼酎を一口呑んだ。

寺で見た名札。

あれ程続けてまだ成仏していない魔物・・・。
泰俊も心なしか顔色が悪い。


しこたま呑んで俺達は寝た。


起きた時、泰俊の姿が見えなくなっていた。携帯に連絡しても応答がない・・。
連絡が取れなくなって数日後、泰俊から俺宛に手紙が届いた。

いきなり居なくなり、連絡を取らなかった事をまず詫びて、その事は書かれていた・・・。


泰俊は今、ある場所に閉じこもり御払いを受けているという。
井戸で見た女の子が取り憑いているそうだ。

蜘蛛と人の融合体。一番封じなくてはならなかったモノ。

でもなんで泰俊に?

泰俊がいうには婿が僧籍になってもらった名が『タイシュン』(泰俊)。
泰俊(やすとし)と同じ名前だった。寺で名札を見て一目でわかったそうだ。

魔物が親と間違えたのか?他に何か理由があるのかはわからない・・・。



俺達は手紙のやり取りで魔物の事を『蜘蛛水子』と呼んだが、
本当の名が何なのか未だに知らない。

泰俊が最初に見た無数の魔物の方が蜘蛛の性が強く親を喰いに行き
井戸の横にいた女の子は人の性が強く親を慕ったというのが俺達2人の結論だ。

女の子は昔から居たのか、泰俊が居たから出てきたのかわからない。
女の子の存在を友明を含め4人の御役も知らないようだった・・・。


例の寺にも新しい住職が出来た。なんと友明だ。
坊主の真似事すらした事のない奴がだ・・。まるで生贄だと思った。 
  




実際そうなのだろう・・・。友明は泣いていた。今度遊びに行く・・・・。




あれから随分、時が過ぎた。




・・・・泰俊はまだ出てこない・・・・・・・・




アパートに帰り着くと郵便受けに手紙が入っていた。
色気のない茶封筒に墨字。間違いない泰俊からだ。
今回少し間が空いたので心配したが元気そうだ。宛名の文字に力がある。

部屋に入り封を切る。封筒の文字とは裏腹に手紙の文字には乱れがあった。

俺は手紙から目を離して、昔あった出来事を思い出そうとし
それはありありと脳裏に浮かび上がる。

手紙にはある住所と 「待っている」 の一言だけ。

異変があったのだ。そして泰俊が俺に助けを求めている。
カバンに必要なものを投げ込み、駅へと向かった。


電車を降り、駅の改札に向かうと一人の僧と目が合った。
若いが怖い眼をしていた。坊主が一体何を見続けたらそんな眼になるんだ? 
ふと考えてしまうくらいの眼光だ。

彼は無言で立ちすくむ俺の所まで来ると 
「こちらに・・・」 とだけ言って俺の荷物を持ち外へ出る。

車に乗せられ一時間程で目的地に着いたが
そこは坊主に合いそうでどう考えても合わない場所。とだけ述べておく。
俺一人だったら、手紙の住所と見比べて立ち往生しただろう事は明白だった。

裏口より入り、こじんまりとした庭を左手に見て廊下を進んだ。
チョッと離れた庭石に15〜6歳位だろうか和服の女の人が背中を見せて座っている。

少し歪な何かを感じた。

丁度、庭を半周したあたりで右に曲がる。
すると雰囲気が一変し、そこはどう見ても寺内の廊下といった趣で
キツネにつままれた様な不思議な感覚に陥った。

突然、前を歩く若い僧が立ち止まり、
「気分はいかがですか?」 と聞いてきた。前述の感想を告げると、

「あなたにも何がしか憑いていた様ですが堕ちたようです。
 角を曲がってこちら側は結界が張ってありますので
 悪しきモノや取り憑かれた者は入る事が出来ません。ではこちらに・・・。」 
と一室へ案内された。


その部屋には既に先客が二名居たが、その片方を見て俺は思わず叫んだ。

「泰俊!!」

恐らく笑ったのだろう。唇がわずかに動いた。
そこには痩せ衰え、骨と皮だけになった泰俊が僧衣をまとって静かに座っている。
涙が溢れ、思わず泰俊にすがりつき手を握る。思いの外、強く握り返して来た。
瞬間、希望の炎が灯る。(コイツはまだ大丈夫だ)と・・・。


顔を上げると、
「け・・・けんきそうた・・な・・なくな・・はか・・・」 
とかすれた音(声)が聞こえた。

コイツが手紙を書き携帯を使わない理由がこれだった。また泣きそうになり 
「うるさい」 とやっと返した。

「は・・・ななし・・を・・そふから・・たのむ・・」 
俺はうなずいた。

あの泰俊が俺を頼っている。・・・俺は決めた。



泰俊が若い僧に連れられ部屋を出た。
部屋には俺と恐らく泰俊の祖父であろう僧が一人残った。
おもむろに太いが優しい声で僧が語る。

「康介君。今日はご足労願って申し訳ない。わしは泰俊が祖父で道俊という。
 今、御覧になった通り、このままでは泰俊は長くない。
 結界を張り直し、肉を齧られる事は無くなったが思いは届く様で日に日に痩せ衰えて行く。

 泰俊が衰えれば衰える程、彼の娘は女へ、母へと成長して行くのじゃ。
 もう見た目は二十歳前後の娘・・・時がない。」

庭で見た座った歪な印象の女の人・・・
あれが泰俊が井戸で見た小さな女の子の成長した姿だったのか? 
ゾクッときた。その事を告げると、

「ふむ・・『晦日封じ』でも『節季封じ』でも『歳封じ』でも駄目。
 君にも見えた程となると厄介な・・やはり井戸へ返して・・・『とどめ』かの・・・。」

いきなり道俊和尚は姿勢を正し、俺に頭を下げて
「“泰俊”を井戸へ下ろし魔物に引導を渡す。孫を救ってやって欲しい。」 と声を振り絞る。


俺は短く 「はい。」 と応えた。


俺の名は“泰俊”。今、呪われし井戸の底に居る。

フラスコの底の様な形状で思いの外広く、
手に持ったたいまつの炎でも全体を照らす事は困難だ。

普通の井戸の底に後から手を加えたのは明らかで、一角に盛り土が見える。

恐らくはここに水子を埋めたのだろう。
井戸の底がそのまま水子の娘の為の霊廟と化している。

何時からか「ニューニュー」と声が聞こえ始めた。まだ娘は現れない。

一瞬、水中に落ちた様な異様な感覚が体を襲う。

途端に体中に痛みが走り、「ブチッ・・グチャ・・ビリィィィ」 
肉が裂け血が滴る・・。生きながら喰われる恐怖。
見えないが『蜘蛛水子』が俺の体を喰い始めたのだ・・・。

俺はいつしかこいつ等の父となったのだ。これで友明は助かるだろうと何となく感じた。

俺はまだ声を出す事が出来ない。必死に耐え、娘が現れるのを待つ。
しかし、どうしても痛みが耐え難くなり容器に入った“俺”の血を壁に投げつけた。

重い水中に居るような感覚が遠のく・・・
しかしすぐに元に戻る。

気が遠くなりかけた時、今までとは違う感覚を感じた。あの歪な感覚。

微笑む女。いや、初代泰俊の娘にして『蜘蛛水子』の母親。
井戸の主。違う・・・井戸本体か?

朦朧とした意識の中、彼女に向かって俺は初めて言葉を発した。
心の中で念じる様に、一語一語心を籠めて・・・


「父たる我は主が世にいづる事を願わず。速やかに、いね(帰れ、去れの意)。」


自分の血で汚れた経本の様なモノを娘ごしに盛り土へ投げつけた。
パッと花火がちり辺りを照らす。

彼女は悲しそうな顔をしてクシャクシャに崩れていった・・・
生皮が剥がれ落ちるように・・・。
ポトポトポトと音がする。『蜘蛛水子』が堕ちる音か?

後にはたくさんの青い玉の様なモノが在ったが、それも地面へと吸い込まれていった。
悲しい儚い色だった。後で聞いたが『魄』(はく)というらしい。

意識が無くなる寸前、俺の体に巻きつけられたロープがキュッと締まるのを感じた・・・。


(たった一言の言の葉で、気の遠くなるほどの長きにわたる呪が解けたのか?
 初代泰俊の父としての想いの強さがこの魔物を産む一因となったのか?
  何故、旅の雲水は・・・)

疑問の嵐の中ふと俺は目を覚ました。
襖が開き例の目つきの鋭い若い僧が顔を覗かせる。
俺が目覚めたのを確認すると泰俊と道俊和尚を伴って部屋に入ってきた。


俺は泰俊が籠っていた部屋で寝かされていた。
痛みをこらえながら傷で火照った体を起すと、
泰俊が近づいて来て「寝ていろ・・・。」 と短く言った。
幾分、膨らみを取り戻した体に強い眼差し。こいつはもう大丈夫だ。と俺は思った。

思わず笑い返す。

 
「康介君。孫の身代わり、何度礼を言ってもたりぬくらいじゃ。
 『転魂の法』は泰俊と魔物、双方に縁がある者しか出来なんだとは言え、
 君の体と心を損なう事を思えばやはり外法であった。
 申し訳ないと思うておる。しかし、これしか泰俊を救う法もなかったのも事実。
 許されよ。」 深々と頭を下げる道俊和尚。

俺は達成感と幾ばくかの寂しさに浸りながら
「いえ・・親友二人のためですから。」 と小さな声で答えた。

「わはは。そういってくれるとわしも救われる。
 君は三人の人間を救うてくれたわい。ありがたい事じゃ。
 しかし、わしはろくな死に方は出来そうにないの・・・。
 人呪わば穴二つ・・・やれやれ。さてとわしは仕事があるのでこれで失礼するよ。
 ・・・泰俊。しばらく彼と話をしなさい。」
もう一度俺に頭を下げ和尚は若い僧と部屋を出て行った。


部屋に残った泰俊と俺はしばらく無言だった。
それは泰俊が何かを語るその決心がつかずにいる為の沈黙だった。
「今更なんだ?言いたいことは今言え。」 俺が切り出す。

ニコッと泰俊が笑う。久しぶりに見たイイ笑顔だった。

「お互い虫に少々齧られたが、お前は少し利口になったな。」 いつもの憎まれ口をたたく。

「康介。お前が疑問に思っているだろう事を教える。
 あの娘は元は普通の『蜘蛛水子』だ。
 それを封じて井戸の中で共食いさせ
 井戸が持つ母としての呪力をも吸収して強力にしたのが・・・
 友明の話に出てきた『旅の雲水』だ。・・・名を・・・日正(にっしょう)という。」

「泰俊・・・なんでそんなにくわしいんだ?」

泰俊 「ああ・・・俺の先祖だからだよ。彼は・・・。
    あの娘はいわば彼の我々一族へ対する過去からの刺客なんだ。
    初代泰俊は血肉を分けた親。

    俺は魔物の産みの親である彼の血族。
    俺が親と慕われたのは名前だけではなかった訳だ・・・。」

俺 「なぜ、日正は血筋の者を呪うような事をする?」

泰俊 「それは・・一族を挙げて彼を殺そうとしたからだよ。今も・・・。」

俺 「え??なにそれ??」

泰俊 「いや・・いい。この件はすっかりお前のお陰でカタがついた。
    じい様も言っていたが俺からも礼を言う。

    何と言っても俺はここで髪の毛をお前に食わせ寝ていただけだ。
    半端な俺を良く助けてくれた。本当にありがとう。

    俺も家を継ぐ事に決めた。親父も帰ってくるし、
    じい様の別件の仕事はとりあえず数日でカタがつく。
    そうしたらいよいよ徳度して坊主だっ。」


笑顔の泰俊。もう話す事は無いと眼が語っている。

泰俊は俺とは別の道を進もうとしている。
昔の様な馬鹿はもう出来ないだろう。
そして俺は多分、元の生活に戻れるだろう。友明も・・・。

俺が感じた達成感と幾ばくの寂しさ・・・
俺は友を助けたつもりで実は失ったんじゃないだろうかとふと思った。



開け放たれた襖の向こう。外の光が異様な程まぶしく感じた。
2012.01.21 Saturday

リアル

 
166 :本当にあった怖い名無し:2011/05/13(金) 11:30:26.52 ID:rKgs8JSd0

そこまで面白いことでもないし
長くしないように気をつけるが多少は目をつぶって欲しい。

では書きます。

何かに取り憑かれたり狙われたり付きまとわれたりしたら
マジで洒落にならんことを最初に言っておく。

もう一つ、俺の経験から言わせてもらうと
一度や二度のお祓いをすれば何とかなるって事はまず無い。
長い時間かけてゆっくり蝕まれるからね。祓えないって事の方が多いみたいだな。

俺の場合は大体2年半位。

一応、断っておくと、五体満足だし人並みに生活できてる。
ただ、残念ながら、終わったかどうかって点は定かじゃない。



まずは始まりから書くことにする。
当時俺は23才。社会人一年目って事で、新しい生活を過ごすのに精一杯な頃だな。

会社が小さかったから、当然同期も少ない。必然的に仲が良くなる。
その同期に東北地方出身の○○って奴がいて、
こいつがまた色んな事を知ってたり、やけに知り合いが多かっりした訳。
で、よく『これをしたら××になる』とか、『△△が来る』とかって話あるじゃない?

あれ系の話はほとんどガセだと思うんだけど
幾つかは本当にそうなってもおかしくないのがあるらしいのよ。

そいつが言うには、何か条件が幾つかあって、偶々揃っちゃうと起きるんじゃないかって。



俺の時は、まぁ悪ふざけが原因だろうな。

当時は車を買ってすぐだったし、一人暮らし始めて間もないし、
何よりバイトとは比べ物にならない給料が入るんで、週末は遊び呆けてた。

8月の頭に、ナンパして仲良くなった子達と○○、そして俺の計4人で、
所謂心霊スポットなる場所に、肝試しに行ったわけさ。
その場は確かに怖かったし、寒気もしたし、何かいるような気がしたりとかあったけども、
特に何も起こらず、まぁスリルを満喫して帰った訳だ。



3日後だった。
当時の会社は上司が帰るまで新人は帰れないって暗黙のルールがあって、毎日遅くなってた。
疲れて家に帰って来て、ほんと今思い出しても理解出来ないのだが、

部屋の入口にある姿見の前で、『してはいけないこと』をやったんだ。
試そうとか考えた訳ではなく、ふと思い付いただけだったと思う。

少し細かな説明をする。

当時の俺の部屋は、駅から徒歩15分、八畳1R
玄関から入ると細い廊下があり、その先に八畳分の部屋がある。

姿見は部屋の入口、つまり廊下と部屋の境目に置いていた。
俺が○○から聞いていたのは、『鏡の前で△をしたまま右を見ると◆が来る』とか言う話だった。

体勢的に、ちょっとお辞儀をしているような格好になる。

「来るわけねぇよな」なんて呟きながら、お辞儀のまま右向いた時だった。
部屋の真ん中辺りに何かいた。見た目は明らかに異常。

多分160センチ位だったと思う。
髪はバッサバサで腰まであって、簾みたいに顔にかかってた。
っつーか、顔にはお札みたいなのが何枚も貼ってあって見えなかった。


なんて呼ぶのか分からないけど、亡くなった人に着せる白い和服を来て
小さい振り幅で左右に揺れてた。

俺はと言うと…、固まった。
声も出なかったし、一切体は動かなかったけど、
頭の中では物凄い回転数で、起きていることを理解しようとしてたと思う。

想像して欲しい。
狭い1Rに、音もない部屋の真ん中辺りに何かいるって状態を。

頭の中では原因は解りきっているのに
起きてる事象を理解出来ないって混乱が渦を巻いてる。
とにかく異常だぞ?灯りをつけてたけど、逆にそれが怖いんだ。
いきなり出てきたそいつが見えるから。

そいつの周りだけ青みがかって見えた。
時間が止まったと錯覚するくらい静かだったな。


とりあえず俺が出した結論は、『部屋から出る』だった。
足元にある鞄を、何故かゆっくりと慎重に手に取った。
そいつからは目が離せなかった。目を離したらヤバいと思った。

後退りしながら廊下の半分
(普通に歩いたら三歩くらいなのに、かなり時間がかかった)を過ぎた辺りで、
そいつが体を左右に振る動きが、少しずつ大きくなり始めた。

と同時に、何か呻き声みたいなのを出し始めた。
そこから先は、実はあんまり覚えてない。気が付くと駅前のコンビニに入ってた。
兎にも角にも、人のいるコンビニに着いて安心した。



ただ頭の中は相変わらず混乱してて、
『何だよアレ』って怒りにも似た気持ちと
『鍵閉め忘れた』って変なとこだけ冷静な自分がいた。
結局、その日は部屋に戻る勇気は無くて、一晩中ファミレスで朝を待った。

空が白み始めた頃、恐る恐る部屋のドアを開けた。良かった。消えてた。
部屋に入る前にもっかい外に出て、缶コーヒーを飲みながら一服した。
実は何もいなかったんじゃないかって思い始めてた。本当にあんなん有り得ないしね。

明るくなったってのと、もういないってので、少し余裕出来たんだろうね。
さっきよりはやや大胆に部屋に入った。
『よし、いない』なんて思いながら
カーテンが閉まってるせいで、薄暗い部屋の電気を点けた。



昨晩の出来事を裏付ける光景が目に入ってきた。

昨日、アイツがいた辺りの床に、物凄く臭いを放つ泥(多分ヘドロだと思う)が、
それも足跡ってレベルを超えた量で残ってた。

起きた事を事実と再認識するまで、時間はかからなかった。

ハッと気付いてますますパニックになったんだけど、…俺、電気消してねーよ…ははっ。
スイッチ押した左手見たら、こっちにも泥がついてんの。


しばらくはどんよりした気持ちから抜けられなかったが
出ちまったもんは仕方ねーなと思えてきた。
まぁここら辺が俺がAB型である典型的なとこなんだけど、
そんな状態にありながら、泥を掃除してシャワー浴びて出社した。
臭いが消えなくてかなりむかついたし、こっちはこっちで大問題だが、
会社を休むことも一大事だったからね。


会社に着くと、いつもと変わらない日常が待っていた。
俺は何とか○○と話す時間を探った。
事の発端に関係する○○から、何とか情報を得ようとしたのだ。

昼休み、やっと捕まえる事に成功した。
以下、俺と○○の会話の抜粋。

「前にさぁ、話してた『△すると◆が来る』とかって話あったじゃん。
 昨日アレやったら来たんだけど」

「は?何それ?」

「だからぁ、マジ何か出たんだって!」

「あー、はいはい。カウパー出たのね」

「おま、ふざけんなよ。やっべーのが出たってんだよ」

「何言ってんのかわかんねーよ!」

「俺だってわかんねーよ!!」

駄目だ、埒があかない。



○○を信用させないと何も進まなかったため、俺は淡々と昨日の出来事を説明した。
最初はネタだと思っていた○○も、やっと半信半疑の状態になった。

仕事終わり、俺の部屋に来て確かめる事になった。
夜10時、幸いにも早めに会社を出られた○○と俺は部屋に着いた。
扉を開けた瞬間に、今朝嗅いだ悪臭が鼻を突いた。
締め切った部屋から熱気とともに、まさしく臭いが襲ってきた。

帰りの道でもしつこいくらいの説明を俺から受けていた○○は、
「・・・マジ?」と一言呟いた。信じたようだ。
問題は、○○が何かしら解決案を出してくれるかどうかだったが、望むべきではなかった。

とりあえず、お祓いに行った方がいいことと、知り合いに聞いてみるって言葉を残し、
奴は逃げるように帰って行った。

予想通りとしか言いようがなかったが、奴の顔の広さだけに期待した。

臭いとこに居たくない気持ちから、その日はカプセルホテルに泊まった。
今夜も出たら終わりかもしれないと思ったのが本音。

翌日、とりあえず近所の寺に行く。さすがに会社どころじゃなかった。
お坊さんに訳を説明すると、
「専門じゃないから分からないですね〜。
 しばらくゆっくりしてはいかがでしょう。きっと気のせいですよ」
なんて呑気な答えが返ってきた。世の中こんなもんだ。



その日は都内では有名な寺や神社を何軒か回ったが、どこも大して変わらなかった。
疲れはてた俺は、埼玉の実家を頼った。
正確には、母方の祖母がお世話になっている、S先生なる尼僧に相談したかった。
っつーか、その人以外でまともに取り合ってくれそうな人が思い浮かばなかった。


ここでS先生なる人を紹介する。


母は長崎県出身で当然祖母も長崎にいる。
祖母は、戦争経験からか熱心な仏教徒だ。
S先生はその祖母が週一度通っている自宅兼寺の住職さんだ。

俺も何度か会ったことがある。

俺は詳しくはないが、宗派の名前は教科書に乗ってるくらいだから
似非者の霊能者などとは比較にならないほどしっかりと仏様に仕えてきた方なのだ。

人柄は温厚、落ち着いた優しい話し方をする。
俺が中学に上がる頃親父が土地を買い家を建てることになった。
地鎮祭とでも言うんだっけ? 兎に角その土地をお祓いした。
その一週間後に長崎の祖母から
「土地が良くないからS先生がお祓いに行く」という内容の電話があった。
当然、母親的にも「もう終わってるのに何で?」ってことでそれを言ったらしい。
 
そしたら祖母から「でもS先生がまだ残ってるって言うたったい」って。

つまり、俺が知る限り唯一頼れる人物である可能性が高いのがS先生だった。



日も暮れてきて、埼玉の実家があるバス停に着いた頃には、夜9時を回る少し前だった。
都内と違い工場ばかりの町なので、夜9時でも人気は少ない。
バス停から実家までの約20分を足早に歩いた。
人気の無い暗い道に街灯が規則的に並んでいる。


内心、一昨日の事がフラッシュバックしてきてかなり怯えてたが
幸いにも奴は現れなかった。
が、夜になり涼しくなったからか、俺は自分の身体の異変に気が付いた。
どうも首の付け根辺りが熱い。

伝わりにくいかと思うが、例えるなら
首に紐を巻き付けられて、左右にずらされているような感じだ。
首に手をやって寒気がした。熱い。首だけ熱い。しかもヒリヒリしはじめた。

どうも発疹のようなモノがあるようだった。

歩いてられなくなり、実家まで全力で走った。

息を切らせながら実家の玄関を開けると、母が電話を切るところだった。
そして俺の顔を見るなりこう言ったんだ。
「あぁ、あんた。長崎のお婆ちゃんから電話来て、心配だって。
 S先生が、あんたが良くない事になってるからこっちおいでって言われたて。
 
 

 あんたなんかしたの?
 あらやだ。あんた首の回りどうしたの!!?」
答える前に玄関の鏡を見た。奴が来るかもとか考えなかったな…、何故か。

首の回り付け根の部分は、縄でも巻かれているかのように見事に赤い線が出来ていた。
近づいてみると、細かな発疹がびっしり浮き上がっていた。
さすがに小刻みに身体が震えてきた。

何も考えずに、母にも一言も返事をせずに階段を駈け上がり、
母の部屋の小さな仏像の前で、南無阿弥陀仏を繰り返した。
そうする他、何も出来なかった。

心配して親父が、「どうした!!」と怒鳴りながら走って来た。
母は異常を察知して祖母に電話している。母の声が聞こえた。泣き声だ。
逃げ場はないと、恐ろしい事になってしまっていると、この時やっと理解した…。



実家に帰り、自分が置かれている状況を理解して3日が過ぎた。
精神的に参ったからか、それが何かしらアイツが起こしたものなのかは分からなかったが、
2日間高熱に悩まされた。
首から異常なほど汗をかき、2日目の昼には血が滲み始めた。
3日目の朝には首からの血は止まっていた。元々滲む程度だったしね。
熱も微熱くらいまで下がり、少しは落ち着いた。

ただ、首の回りに異常な痒さが感じられた。
チクチクと痛くて痒い。枕や布団、タオルなどが触れると、鋭い小さな痛みが走る。
血が出ていたから、瘡蓋が出来て痒いのかと思い、意識して触らないようにした。

布団にもぐり、夕方まで気にしないように心掛けたが
便所に行った時にどうしても気になって鏡を見た。
鏡なんて見たくもないのに、どうしても自分に起きてる事を
この目で確認しないと気が済まなかった。

鏡は見たこともない状況を写していた。

首の赤みは完全に引いていた。その代わり、発疹が大きくなっていた。

今でも思い出す度に鳥肌が立つほど気持ち悪いが
敢えて細かな描写をさせて欲しい。気を悪くしないでくれ。

元々首の回りの線は、太さが1cmくらいだった。
そこが真っ赤になり、元々かなり色白な俺の肌との対比で
正しく赤い紐が巻かれているように見えていた。


これが3日前の事。


目の前の鏡に映るその部分には、膿が溜まっていた。
…いや、正確じゃないな。


正確には、赤い線を作っていた発疹には膿が溜まっていて、
まるで特大のニキビがひしめき合っているようだった。
そのほとんどが膿を滲ませていて
あまりにおぞましくて気持ちが悪くなり、その場で吐いた。

真水で首を洗い、軟膏を母から借り、塗り、泣きながら布団に戻った。
何も考えられなかった。唯一、『何で俺なんだ』って憤りだけだった。

泣きつかれた頃、携帯がなった。○○からだった。
こういう時、ほんの僅かでも、希望って物凄いエネルギーになるぞ?
正直、こんなに嬉しい着信はなかった。

「もしもし」

『おぉ〜!大丈夫〜!?』

「ぃや…大丈夫な訳ねーだろ…」

『ぁー、やっぱヤバい?』

「やべーなんてもんじゃねーよ。はぁ…。っつーか何かないんかよ?」

『ぅん、地元の友達に聞いてみたんだけどさ〜
 ちょっと分かる奴居なくて…、申し訳ない』

「ぁー、で?」

正直、○○なりに色々してくれたとは思うが
この時の俺に相手を思いやる余裕なんてなかったから、
かなり自己中な話し方に聞こえただろう。

『いや、その代わり、友達の知り合いにそーいうの強い人がいてさー。
 紹介してもいいんだけど、金かかるって…』

「!? 金とんの?」

『うん、みたい…。どーする?』

「どんくらい?」

『知り合いの話だと、とりあえず五十万くらいらしい…』

「五十万〜!?」

当時の俺からすると、働いているとはいえ五十万なんて払えるわけ無い額だった。


金が惜しかったが、恐怖と苦しみから解放されるなら…。選択肢は無かった。

「…分かった。いつ紹介してくれる?」

『その人今群馬にいるらしいんだわ。知り合いに聞いてみるから、ちょっと待ってて』




話が前後するが、俺が仏像の前で南無阿弥陀仏を繰り返していた時
母は祖母に電話をかけていた。
祖母からすぐにS先生に相談が行き、
(相談と言うよりも、助けて下さいってお願いだったらしいが)

最終的には、S先生がいらしてくれる事になっていた。

ただし、S先生もご多忙だし、何より高齢だ。こっちに来れるのは三週間先に決まった。

つまり、三週間は不安と恐怖と、何か起きてもおかしか無い状況に居なければならなかった。
そんな状況だから、少しでも出来るだけの事をしてないと、気持ちが落ち着かなかった。



○○が電話を折り返してきたのは、夜11時を過ぎた頃だった。

『待たせて悪いね。知り合いに相談したら連絡入れてくれて、明日行けるって』

「明日?」

『ほら、明日日曜じゃん?』

そうか、いつの間にか奴を見てから五日も経つのか。不思議と会社の事を忘れてたな。

「分かった。ありがと。ウチまで来てくれるの?」

『家まで行くって。車で行くらしいから、住所メールしといて』

「お前はどーすんの?来て欲しいんだけど」

『行く行く』

「金、後でも大丈夫かな?」

『多分大丈夫じゃね?』

「分かった。近くまで来たら電話して」

何とも段取りの悪い話だが、若僧だった俺には仕方の無い事だった。



その晩、夢を見た。
寝てる俺の脇に、白い和服をきた若い女性が正座していた。
俺が気付くと、三指をつき深々と頭を下げた後、部屋から出ていった。
部屋から出る前に、もう一度深々と頭を下げていた。
この夢がアイツと関係しているのかは分からなかったが。

翌日、昼過ぎに○○から連絡が来た。電話で誘導し出迎えた。
来たのは○○とその友達、そして三十代後半くらいだろう男が来た。
普通の人だと思えなかったな。

チンピラみたいな感じだったし、何の仕事をしてるのか想像もつかなかった。
俺がちゃんと説明していなかったから、両親が訝しんだ。
まず間違いなく偽名だと思うが、男は林と名乗った。


林「T君の話は彼から聞いてましてね。まー厄介な事になってるんです」
(今さらですまん。Tとは俺、会話中の彼は○○だと思って読んでくれ)

父「それで、林さんはどういった関係でいらしていただいたんですか?」

林「いやね、これもう素人さんじゃどーしようもなぃんですよ。
  お父さん、いいですか?信じられないかも知れませんが
  このままだとT君、危ないですよ?
  で、彼が友達のT君が危ないから助けて欲しいって言うんでね、
  ここまで来たって訳なんですよ」

母「Tは危ないんでしょうか?」

林「いやね、私も結構こういうのは経験してますけど、こんなに酷いのは初めてですね。
  この部屋いっぱいに悪い気が充満してます」

父「…失礼ですが、林さんのご職業をお聞きしても良いですか?」

林「あー、気になりますか?ま、そりゃ急に来てこんな話したら怪しいですもんねぇ
  でもね、ちゃんと除霊して、辺りを清めないと、T君、ほんとに連れて行かれますよ?」

母「あの、林さんにお願いできるでしょうか?」

林「それはもう、任せていただければ。
  こーいうのは、私みたいな専門の者じゃないと駄目ですからね。
  ただね、お母さん。こっちとしとも危険があるんでね
  少しばかりは包んでいただかないと。ね、分かるでしょ?」

父「いくらあればいいんです?」

林「そうですね〜、まぁ二百はいただかないと…」

父「えらい高いな!?」

林「これでも彼が友達助けて欲しいって言うから、わざわざ時間かけて来てるんですよ?
  嫌だって言うなら、こっちは別に関係無いですからね〜。
  でも、たった二百万でT君助かるなら、安いもんだと思いますけどね」

林「それに、T君もお寺に行って相手にされなかったんでしょう?
  分かる人なんて一握りなんですわ。また一から探すんですか?」

俺は黙って聞いてた。
さすがに二百万って聞いた時は○○を見たが、○○もばつの悪そうな顔をしていた。
結局、父も母も分からないことにそれ以上の意見を言える筈もなく、渋々任せることになった。



林は、早速今夜に除霊をすると言い出した。
準備をすると言い、一度出掛けた。
(出がけに、両親に準備にかかる金をもらって行った)
夕方に戻ってくると、蝋燭を立て、御札のような紙を部屋中に貼り
膝元に水晶玉を置き数珠を持ち、日本酒だと思うが、それを杯に注いだ。

何となくそれっぽくなって来た。

林「T君。これからお祓いするから。これでもう大丈夫だから。
  お父さん、お母さん。すみませんが、一旦家から出ていってもらえますかね?
  もしかしたら、霊がそっちに行く事も無い訳じゃないですから」

両親は不本意ながら、外の車で待機する事になった。
日も暮れて辺りが暗くなった頃、お祓いは始まった。



林はお経のようなものを唱えながら、一定のタイミングで杯に指をつけ
俺にその滴を飛ばした。
俺は半信半疑のまま、布団に横たわり目を閉じていた。
林からそうするように言われたからだ。

お祓いが始まってから大分たった。



お経を唱える声が途切れ途切れになりはじめた。
目を閉じていたから、嫌な雰囲気と
少しずつおかしくなってゆくお経だけが俺に分かることだった。

最初こそ気付かなかったが、首がやけに痛い。

痒さを通り越して、明らかに痛みを感じていた。
目を開けまいと、痛みに耐えようと歯を食いしばっていると、お経が止まった。


しかしおかしい。



良く分からないが、区切りが悪い終り方だったし
終わったにしては何も声をかけてこない。
何より、首の痛みは一向に引かず、寧ろ増しているのだ。
寒気も感じるし、何かが布団の上に跨がっているような気がする。



目を開けたらいけない。それだけは絶対にしてはいけない。
分かってはいたが…。開けてしまった。
目を開けると、恐ろしい光景が飛び込んできた。

林は、布団で寝ている俺の右手側に座りお祓いをしていた。
林と向き合うように、俺を挟んでアイツが正座していた。
膝の上に手を置き、上半身だけを伸ばして林の顔を覗き込んでいる。

林の顔とアイツの顔の間には、拳一つ分くらいの隙間しかなかった。

不思議そうに、顔を斜めにして、梟のように小刻みに顔を動かしながら、
聞き取れないがぼそぼそと呟きながら、林の顔を覗き込んでいた。
今思うと、林に何かを囁いていたのかもしれない。


林は少し俯き気味に、目線を下に落としたまま瞬きもせず
口はだらしなく開いたまま涎を垂らしていた。
少し顔が笑っていたように見えた。時々小さく頷いていた。

俺は瞬きも忘れ凝視していた。
不意にアイツの首が動きを止めた。次の瞬間、顔を俺に向けた。
俺は慌てて目をギュッと閉じ、布団を被り、ひたすら南無阿弥陀仏と唱えていた。

俺の顔の間近で、アイツが梟のように顔を動かしている光景が瞼に浮かんできた。

恐ろしかった。

ガタガタと音が聞こえ、階段を駈け降りる音が聞こえた。

林が逃げ出したようだ。

俺は怖くて怖くて布団に潜り続けていた。



両親が来て、電気を点けて布団を剥いだとき、丸まって身体が固まった俺がいたそうだ。

林は両親に見向きもせず車に乗り込み
待っていた○○、○○の友達と供に何処かへ消えていった。
後から○○に聞いた話では、「車を出せ」以外は言わなかったらしい。
解決するどころか、ますます悪いことになってしまった俺には、
三週間先のS先生を待っている余裕など残っていなかった。


アイツを再び目にしてから、さらに4日が経った。
当たり前かも知れないが、首は随分良くなり
まだ痕が残るとは言え、明らかに体力は回復していた。
熱も下がり、身体はもう問題が無かった。


ただ、それは身体的な話でしかなくて、朝だろうが夜だろうが関係無く怯えていた。
何時どこでアイツが姿を現すかと思うと、怖くて仕方無かった。
眠れない夜が続き、食事もほとんど受け付けられず、常に辺りの気配を気にしていた。
たった10日足らずで、俺の顔は随分変わったと思う。

精神的に追い詰められていた俺には、時間が無かった。

当然、まともな社会生活なんて送れる訳も無く、親から連絡を入れてもらい会社を辞めた。
(これも後から聞いた話でしかないのだが…、連絡を入れた時は随分嫌味を言われたらしい)

とにかく何もかもが怖くて、洗濯物や家の窓から見える柿の木が揺れただけでも、
もしかしたらアイツじゃないかと一人怯えていた。
S先生が来るまでには、まだ二週間あまりが残っていた。俺には長すぎた。



見かねた両親は、強引に怯える俺を車に押し込み、何処かへ向かった。
父が何度も「心配するな」「大丈夫だ」と声をかけた。
車の後部座席で、母は俺の肩を抱き頭を撫でていた。
母に頭を撫でられるなんて何年ぶりだったろう。
時間の感覚も無く(当時の俺にはだが)、車で移動しながら夜を迎えた。
二十歳も過ぎて恥ずかしい話だが、母に寄り添われ安心したのか、久方ぶりに深い眠りに落ちた。


目が覚めるとすでに陽は登っていて、久しぶりに眠れてすっきりした。
実際には丸1日半眠っていたらしい。多分、あんなに長く眠るなんてもうないだろうな。
外を見ると、車は見慣れない景色の中を進んでいた。

少しずつ、見覚えのある景色が目に入り始めた。道路の中央に電車が走っている。
車は長崎に着いていた。これには俺も流石に驚いた。
怯え続ける俺を気遣い、飛行機や新幹線は避け車での移動にしてくれたらしい。

途中で休憩は何度も入れたらしいが、
それでもろくに眠らず車を走らせ続けた父と
俺が怖がらないようにずっと寄り添ってくれた母への恩は、一生かけても返しきれそうもない。




祖父母の住む所は、長崎の柳川という。

柳川に着くと坂道の下に車を停め、両親が祖父母を呼びに行った。
(祖父母の家は、坂道から脇に入った石段を登った先にある)
その間、俺は車の中に一人きりの状態になった。
両親が二人で出ていったのは、
足腰の悪い祖母や、S先生の家に持っていく荷物を運ぶのを手伝うためだったのだが、

自分で「大丈夫、行って来て」なんて言ったのは、本当に舐めてた証拠だと思う。
久しぶりに眠れた事や、今いる場所が東京・埼玉と
随分離れた長崎だった事が、気を弛めたのかもしれない。

車の後部座席に足をまるめて座り(体育座りね)
外をぼーっと眺めていると、急に首に痛みが走った。
今までの痛みと比較にならないほど、言い過ぎかも知れないが激痛が走った。

首に手をやると滑りがあった。…血が出てた。

指先に付いた血が、否応なしに俺を現実に引き戻した。

この時、怖いとか、アイツが近くにいるかもって考える前に、
「またかよ…」ってなげやりな気持ちが先に来たな。

もう何か嫌になって泣けてきた。

分かってもらえれば嬉しいけど、
嫌な事が少しの間をおいて続けて起きるのって
もうどうしようも無いくらい落ち込むんだよね。

気持ちの整理が着き始めると嫌な事が起きるっては辛いよね。
この時は少し気が弛んでいたから尚更で、
「どーしろっつーんだよ!!」とか
「いい加減にしてくれよ」とか独り言をぶつぶつ言いながら泣いてた。


車に両親が祖父母を連れて戻って来たんだけど、すぐにパニックになった。


何しろ問題の俺が、首から血を流しながら
後部座席で項垂れて泣いてるからね。何も無い訳がないよな。
「どうした?」とか、「何とか言え!」とか
「もぅやだー」とか、「Tちゃん、しっかりせんか!!」とか、
「どげんしたと!?」とか、「あなたどうしよう」とか。


この時は思わず、「てめぇらぅるっせーんだよ!!」って怒鳴ってしまった。


こんな時に説明なんか出来るわけねーだろって
てめぇらじゃ何も出来ねぇ癖に…黙ってろよ!とか思ってたな。
勝手に悪い事になって仕事は辞めるわ、騙されそうになるわ…

こんな俺みたいな駄目な奴のために、走り回ってくれてる人達なのに…。
今考えると本当に恥ずかしい。

で、人生で一度きりなんだけどさ、親父がいきなり俺の左頬に平手打ちをしてきた。
物凄い痛かったね。親父、滅茶苦茶厳しくて何度も口喧嘩はしたけど、
多分生まれてから一回も打たれた事無かったからな。
(父のポリシーで、子供は絶対殴らないってのは昔から耳タコだったしね)

で、一言だけ「お祖父さんとお祖母さんに謝れ」って、静かだけど厳しい口調で言ったんだ。

それで、何故か落ち着いた。ってかびっくりし過ぎて
それまでの絶望感がどっかに行ってしまったよ。





冷静さを取り戻して皆に謝ったら、急に腹が据わってきた気がした。
走り始めた車の中で、励ましてくれる祖父母の言葉に感極まってまた泣いた。
自分で思ってるよか全然心が弱かったんだな、俺は。

S先生の家(寺でもあるが)に着くと、ふっと軽くなった気がした。
何か起きたっていうよりは、俺が勝手に安心したって方が正しいだろうな。
門をくぐり、石畳が敷かれた細い道を抜けると、初老の男性が迎え入れてくれた。
そう言えば、S先生の家にはいつもお客さんがいたような気がする。
きっと、祖母のように通っている人が多いんだろう。


奥に通され裏手の玄関から入り進んでいくと、十畳くらいの仏間がある。
S先生は俺の記憶の通り、仏像の前に敷かれた座布団の上に正座していて、ゆっくりと振り向いたんだ。
(下手な長崎弁を記憶に頼って書くが見逃してな)

祖母「Tちゃん、もうよかけんね。S先生が見てくれなさるけん」

S先生「久しぶりねぇ。随分立派になって。早いわねぇ」

祖母「S先生、Tちゃんば大丈夫でしょかね?」

祖父「大丈夫って。そげん言うたかてまだ来たばかりやけん、S先生かてよう分からんてさ」

祖母「あんたさんは黙っときなさんてさ。もうあたし心配で心配で仕方なかってさ」

何でだろう…ただS先生の前に来ただけなの、にそれまで慌ていた祖父母が落ち着いていた。
それは両親にも俺にも伝わってきて、深く息を吐いたら身体から悪いものが出ていった気がした。
両親はもう体力的にも精神的にも限界に近かったらしく、

「疲れちゃったやろ?後はS先生が良くしてくれるけん、隣ば行って休んでたらよか」
と、人懐こい祖父の言葉に甘えて隣の部屋へ。




S先生「じゃあTちゃん、こっちにいらっしゃい」

S先生に呼ばれ、向かい合わせで正座した。

S先生「それじゃIさん達も隣の部屋で寛いでらして下さい。Tちゃんと話をしますからね。
    後は任せて、こっちの部屋には良いと言うまで戻って来ては駄目ですよ?」

祖父「S先生、Tちゃんばよろしくお願いします!」

祖母「Tちゃん、心配なかけんね。S先生がうまいことしてくれるけん。
   あんたさんはよく言うこと聞いといたらよかけんね。ね?」

しきりにS先生にお願いして
俺に声をかけてくれる祖父母の姿にまた涙が出てきた。泣きっぱなしだな俺。



S先生はもっと近づくように言い、膝と膝を付け合わせるように座った。
俺の手を取り、暫くは何も言わず優しい顔で俺を見ていた。
俺は何故か、悪さをして怒られるじゃないかと親の顔色を伺っていた
子供の頃のような気持ちになっていた。

目の前の、敢えて書くが、自分よりも小さくて明らかに力の弱いお婆ちゃんの、
威圧的でもなんでもない雰囲気に呑まれていた。
あんな人本当にいるんだな。

S先生「…どうしようかしらね」

俺「…」

S先生「Tちゃん、怖い?」

俺「…はい」

S先生「そうよねぇ。このままって訳には行かないわよねぇ」

俺「えっと…」

S先生「あぁ、いいの。こっちの話だから」

何がいいんだ!?ちっともよかねーだろなんて気持ちが溢れて来て
耐えきれずついにブチ撒けた。
本当に人として未熟だなぁ、俺は。




俺「あの、俺どーなるんすか? もう早いとこ何とかして欲しいんです。
  大体何なんですか?何でアイツ俺に付きまとうんですか?
  もう勘弁してくれって感じですよ。 S先生、何とかならないんですか?」

S先生「Tちゃ…」

俺「大体、俺別に悪いこと何もしてないっすよ!?
  確かに□□(心霊スポットね)には行ったけど、俺だけじゃないし、
  何で俺だけこんな目に会わなきゃいけないんすか?
  鏡の前で△しちゃだめだってのも関係あるんですか?
  ホント訳わかんねぇ!!あーっ!苛つくぅぁー!!」

「ドォ〜ドォルルシッテ」

「ドォ〜ドォルル」

「チルシッテ」

…何が何だか解らなかった。
(ホントに訳解んないので、取り敢えずそのまま書く)

「ドォ〜。 シッテドォ〜シッテ」

左耳に鸚鵡か鸚哥みたいな、甲高くて抑揚の無い声が聞こえてきた。



それが「ドーシテ」と繰り返していると理解するまで少し時間がかかった。
俺はS先生の目を見ていたし、S先生は俺の目を見ていた。
ただ優しかったS先生の顔は、無表情になっているように見えた…。

左側の視界には何かいるってのは分かってた。チラチラと見えちゃうからね。
よせば良いのに、左を向いてしまった。首から生暖かい血が流れてるのを感じながら。




アイツが立ってた。体をくの字に曲げて、俺の顔を覗き込んでいた。
くどいけど…訳が解らなかった。起きてることを認められなかった。

此処は寺なのに、目の前にはS先生がいるのに…何でなんで何で…。
一週間前に見たまんまだった。アイツの顔が目の前にあった。

梟のように小刻みに顔を動かしながら、俺を不思議そうに覗き込んでいた。
「ドォシッテ?ドォシッテ?ドォシッテ?ドォシッテ?」
鸚鵡のような声でずっと質問され続けた。

きっと…林も同じようにこの声を聞いていたんだろう。
俺と同じ言葉を囁かれていたのかは分からないが…。
俺は息する事を忘れてしまって、目と口を大きく開いたままだった。
いや、息が上手く出来なかったって方が正しいな。

たまに「コヒュッ」って感じで、息を吸い込む事に失敗してた気がするし。
そうこうしているうちに、アイツが手を動かして、
顔に貼り付けてあるお札みたいなのを、ゆっくりめくり始めたんだ。



見ちゃ駄目だ!! 絶対駄目だって分かってるし逃げたかったんだけど、動けないんだよ!!
もう顎の辺りが見えてしまいそうなくらいまで来ていた。
心の中では「ヤメロ!それ以上めくんな!!」って叫んでるのに、
口からは「ァ…ァカハッ…」みたいな情けない息しか出ないんだ。


もうやばい!!ヤバい!ヤバい!ってところで、「パンッ!!」って。
例えとか誇張でもなく“跳び上がった。心臓が破裂するかと思った。



「パン!!」



その音で俺は跳び上がった。
正座してたから、体が倒れそうになりながら後に振り向いて、すぐ走り出した。

何か考えてた訳じゃなく、体が勝手に動いたんだよね。
でも慣れない正座のせいで、足が痺れてまともに走れないのよ。
痺れて足が縺れた事と、あんまりにも前を見てないせいで、
頭から壁に突っ込んだが、ちっとも痛くなかった。

額から血がだらだら出てたのに…
それだけテンパって周りが見えてなかったって事だな。
血が目に入って何も見えない。

手をブン回して出口を探した。けど、的外れの方ばっかり探してたみたい。

「まだいけません!」

いきなりS先生が大きい声を出した。
障子の向こうにいる両親や祖父母に言ったのか、俺に言ったのか分からなかった。

分からなかったが、その声は俺の動きを止めるには十分だった。
ビクってなってその場で硬直。またもや頭の中では
物凄い回転で事態を把握しようとしていた。

っつーか把握なんて出来る筈もなく、S先生の言うことに従っただけなんだけどね。


俺の動きが止まり、仏間に入ろうとする両親と祖父母の動きが止まった事を確認するかのように、
少しの間を置いてからS先生が話し始めた。

S先生「Tちゃんごめんなさいね。怖かったわね。
  もう大丈夫だからこっちに戻ってらっしゃい。
  Iさん、大丈夫ですからもう少し待ってて下さいね」

障子(襖だったかも)の向こうから、しきりに何か言ってのは聞こえてたけど、覚えてない。

血を拭いながらS先生の前に戻ると、手拭いを貸してくれた。
お香なのかしんないけど、いい匂いがしたな。


ここに来てやっと、あの音はS先生が手を叩いた音だって気付いた。
(質問出来る余裕は無かったけど)


「Tちゃん、見えたわね?聞こえた?」

「見えました…どーして?って繰り返してました」

この時にはもう、S先生の顔はいつもの優しい顔になってたんだ。
俺も今度はゆっくりと、出来るだけ落ち着いて答える事だけに集中した。
まぁ…考えるのを諦めたんだけどね。

「そうね。どうして?って聞いてたわね。何だと思った?」

さっぱり分からなかった。考えようなんて思わなかったしね。

「?? …いや…、ぅぅん?…分かりません」

「Tちゃんはさっきの怖い?」

「怖い…です」

「何が怖いの?」

「いや…、だって普通じゃないし。幽霊だし…」

ここらへんで、俺の脳は思考能力の限界を越えてたな。
S先生が何を言いたいのかさっぱりだった。

「でも何もされてないわよねぇ?」

「いや…首から血が出たし、それに何かお札みたいなの捲ろうとしてたし。
 明らかに普通じゃないし…」

「そうよねぇ。でも、それ以外は無いわよねぇ」

「…」

「難しいわねぇ」

「あの、よく分からなくて…すいません」
 
「いいのよ」

S先生は、俺にも分かるように話してくれた。諭すっていった方がいいかもしれない。


まず、アイツは幽霊とかお化けって呼ばれるもので間違いない。
じゃあ所謂悪霊ってヤツかって言うと、そう言いきっていいかS先生には難しいらしかった。
明らかにタチが悪い部類に入るらしいけど、S先生には悪意は感じられなかったって言っていた。
俺に起きた事は何なのかに対してはこう答えた。

「悪気は無くても強すぎるとこうなっちゃうのよ。
 あの人ずっと寂しかったのね。
 『話したい、触れたい、見て欲しい、気付いて気付いてー』って、ずっと思ってたのね。

 Tちゃんはね、分からないかもしれないけど、暖かいのよ。
 色んな人によく思われてて、それがきっと『いいな〜。優しそうだな〜』って思ったのね。
 だから、自分に気付いてくれた事が、嬉しくて仕方なかったんじゃないかしら。

 でもね、Tちゃんはあの人と比べると全然弱いのね。
 だから、近くに居るだけでも怖くなっちゃって、体が反応しちゃうのね」

S先生は、まるで子供に話すようにゆっくりと、難しい言葉を使わないように話してくれた。



俺はどうすればいいのか分からなくなったよ。
アイツは絶対に悪霊とかタチの悪いヤツだと決めつけてたから。
S先生にお祓いしてもらえばそれで終ると思ってたから…。
それなのに、S先生がアイツを庇うように話してたから…。

「さて、それじゃあ今度は何とかしないといけないわね。
 Tちゃん、時間かかりますけど、何とかしてあげますからね」

この一言には本当に救われたよ。
あぁ、もういいんだ。終るんだって思った。やっと安心したんだ。


S先生に教えられたことを書きます。俺にとって一生忘れたくない言葉です。
「見た目が怖くても、自分が知らないものでも、自分と同じように苦しんでると思いなさい。
 救いの手を差し伸べてくれるのを待っていると思いなさい」

S先生はお経をあげ始めた。お祓いのためじゃ無く、アイツが成仏出来るように。
その晩、額は裂けてたし、よくよく見れば首の痕が大きく破けて痛かったけど、本当にぐっすり眠れた。
(お経終わってもキョドってた俺のために、笑いながらその日は泊めてくれた)




翌日、朝早く起きたつもりが、S先生はすでに朝のお祈りを終らしてた。
「おはよう、Tちゃん。さ、顔洗って朝御飯食べてらっしゃい。
 食べ終わったら本山に向かいますからね」

関係者でも何でもないんで、あまり書くのはどうかと思うが少しだけ。
S先生が属している宗派は、前にも書いた通り教科書に載るくらい歴史があって、
信者の方も修行されてる方も、日本全国にいらっしゃるのね。
教えは一緒なんだけど、地理的な問題から東と西それぞれに本山があるんだって。
俺が連れていってもらったのが西の本山。

本山に暫くお世話になって、
自分が元々持っている徳(未だにどんなものか説明できないけど)を高める事と、
アイツが少しでも早く成仏出来るように、本山で供養してあげられるためってS先生は言ってた。
その話を聞いて一番喜んだのが祖母。まだ信じられなそうだったのが親父。
最後は、俺が「もう大丈夫。行ってくる」って言ったから反対しなかったけど。

本山に着くと迎えの若い方が待っていて、S先生に丁寧に挨拶してた。
本堂の横奥にある小屋(小屋って呼ぶのが憚れるほど広くて立派だったが)で本山の方々にご挨拶。
ここでもS先生にはかなりの低姿勢だったな。
S先生、実は凄い人らしく
望めばかなりの地位にいても不思議じゃないんだって後から聞いた。
(「寂しいけど序列ができちゃうのね」ってS先生は言ってた)
俺は本山に暫く厄介になり、まぁ客人扱いではあったけど
皆さんと同じような生活をした。
多分、S先生の言葉添えがあったからだろうな。



その中で、自分が本当に幸運なんだなって実感したよ。
もう四十年間ずっと蛇の怨霊に苦しめられている女性や、
家族親族まで祟りで没落してしまって、身寄りが無くなってしまったけど、
家系を辿れば立派な士族の末裔の人とか…

俺なんかよりよっぽど辛い思いしてる人が、こんなにいるなんて知らなかったから…。
厳しい生活の中にいたからなのか、場所がそうだからなのか
あるいはS先生の話があったからなのか、恐怖は大分薄れた。
(とは言うものの、ふと瞬間にアイツがそばに来てる気がしてかなり怯えたけど)



本山に預けてもらって一ヶ月経った頃、S先生がいらっしゃった。

「あらあら、随分良くなったみたいね」

「えぇ、S先生のおかげですね」

「あれから見えたりした?」

「いや…一回も。多分成仏したかどっかにいったんじゃないですか?ここ、本山だし」

「そんな事ないわよ?」

顔がひきつった。

「あら、ごめんなさい。また怖くなっちゃうわよね。
 でもねTちゃん、ここには沢山の苦しんでる人がいるの。
 その人達を少しでも多く助けてあげるのが、私達の仕事なのよ」

多分だけど、S先生の言葉にはアイツも含まれてたんだと思う。

「Tちゃん、もう少しここにいて勉強しなさい。折角なんだから」
俺はS先生の言葉に従った。
あの時の事がまだまだ尾を引いていて、まだここにいたいって思ってたからね。

それに、一日はあっという間なんだけど…何て言うか
時間がゆっくり流れてような感じが好きだったな。
(何か矛盾してるけどね)
そんなこんなが続いて、結局三ヶ月も居座ってしまった。
 


その間S先生は、こっちには顔を出さなかった。(二ヶ月前に来たきり)
やっぱりS先生の言葉がないと不安だからね。

でも、哀しいかな、
流石に三ヶ月もそれまで自分がいた騒々しい世界から隔離されると
物足りない気持ちが強くなってた。



実に二ヶ月ぶりにS先生がやって来て、やっと本山での生活は終りを迎えようとしていた。
身支度を整え、兎に角お世話になった皆さんに一人ずつ御礼を言い、S先生と帰ろうとしたんだ。
でも気付くと、横にいたはずのS先生がいない。
あれ?と思って振り向いたら、少し後にいたんだ。

歩くの速すぎたかな?って思って戻ったら

優しい顔で「Tちゃん、帰るのやめてここに居たら?」って言われた。

実はS先生に認められた気がして少し嬉しかった。

「いや、僕にはここの人達みたいには出来ないです。
 本当に皆さん凄いと思います。真似出来そうもないですよ」

照れながら答えたら、

「そうじゃなくて、帰っちゃ駄目みたいなのよ」

「え?」

「だってまだ残ってるから」

また顔がひきつった。



結局、本山を降りる事が出来たのは、それから二ヶ月後だった。
実に五ヶ月も居座ってしまった。
多分、こんなに長く、家族でも無い誰かに生活の面倒を見てもらう事は、この先ないだろう。

S先生から、「多分もう大丈夫だと思うけど、しばらくの間は月に一度おいでなさい」と言われた。
アイツが消えたのか、それとも隠れてれのか、本当のところは分からないからだそうだ。
長かった本山の生活も終って、やっと日常に戻って来た。



借りてたアパートは母が退去手続きを済ましてくれていて
実家には俺の荷物が運び込まれてた。
アパートの部屋を開けた時、何かを燻したような臭いと
部屋の真ん中辺りの床に小さな虫が集まってたらしい。

怖すぎたらしく、その日はなにもしないで帰って来たんだってさ。

翌日、仕方無いんで、意を決してまた部屋を開けたら
臭いは残ってたけど虫は消えてたらしい。
母には申し訳ないが、俺が見なくて良かった。



実家に戻り、実に約半年ぶりくらいに携帯を見ると
(そーいや、それまでは気にならなかったな)
物凄い件数の着信とメールがあった。中でも一番多かったのが○○。
メールから、奴は奴なりに自分のせいでこんな事になったって自責の念があったらしく、
謝罪とか、こうすればいいとか、こんな人が見つかったとか、まめに連絡が入ってた。
母から○○が家まで来た事も聞いた。

戻って二日目の夜、○○に電話を入れた。

電話口が騒がしい。○○は呂律が回らず何を言っているか分からなかった。

…コンパしてやがった。

とりあえず電話をきり、『殺すぞ』とメールを送っておいた。所詮世の中他人は他人だ。

翌日、○○から『謝りたいから時間くれないか?』とメールが来た。
電話じゃなかったのは、気まずかったからだろう。
夜になると、家まで○○が来た。
わざわざ遠いところまで来るくらいだ。相当後悔と反省をしていたのだろう。
(夜に出歩くのを俺が嫌ったからってのが、一番の理由である事は言うまでもない)

玄関を開け○○を見るなり、二発ぶん殴ってやった。
一発は奴の自責の念を和らげるため、一発はコンパなんぞに行ってて俺を苛つかせた事への贖罪のめに。
言葉で許されるよりも、殴られた方がすっきりする事もあるしね。

まぁ、二発目は俺の個人的な怒りだが。

○○に経緯を細かく話し、その晩は二人して興奮したり怖がったり…
今思うと当たり前の日常だなぁ。




○○からは、あの晩のそれからを聞いた。
あの晩、逃げたした時には、林は明らかにおかしくなっていた。
林の車の中で友達と待っていた○○には、まず間違いなくヤバい事になっているって事がすぐに分かったそうだ。
でも、後部座席に飛び乗ってきた林の焦り方は尋常じゃ無かったらしく、車を出さざるを得なかったらしい。

「反抗したりもたついたりしたら、何されっか分かんなかったんだよ」

○○の言葉が状況を物語っていた。
○○は、車が俺の家から離れ高速の入り口近くの信号に捕まった時に、逃げ出したらしい。

「だってあいつ、途中から笑い出したり、震えたり、
 『俺は違う』とか『そんな事しません』とか言い出して怖いんだもんよ」

アイツが何か囁いてる姿が甦ってきて、頭の中の映像を消すのに苦労した。
俺の家に戻って来なかったのは、単純に怖すぎたからだって。

「根性無しですみませんでした」って謝ってたから許した。俺が○○でも勘弁だしね。
その後、林がどうなったかは誰も知らない。

さすがに今回の件では○○も頭に来たらしく、林を紹介した友達を問い詰めたらしい。
結局、林は詐欺師まがいにも成りきれないようなどうしようも無いヤツだったらしく、
唆されて軽い気持ち(小遣い稼ぎだってさ…)で紹介したんだと。
○○曰く、「ちゃんとボコボコにしといたから勘弁してくれ!」との事。
でも、こんな状況を招いたのが自分の情報だってのには参ったから、今度は持てる人脈を総動員したが…

こんなことに首を突っ込んだり聞いた事がある奴が回りにいるはずもなく、
多分とか〜だろうとかってレベルの情報しか無かったんだ。

だから、『何か条件が幾つかあって、偶々揃っちゃうと起きるんじゃないか』としか言えなかった。




その後、俺はS先生の言い付けを守って、毎月一度S先生を訪ねた。
最初の一年は毎月、次の一年は三か月に一度。
○○も俺への謝罪からか、何も無くても家まで来ることが増えたし、
S先生のところに行く前と帰ってきた時には、必ず連絡が来た。

アイツを見てから二年が経った頃、S先生から、
「もう心配いらなそうね。Tちゃん
 これからはたまに顔出せばいいわよ。でも、変な事しちゃだめよ」
って言ってもらえた。

本当に終ったのか…俺には分からない。
S先生はその三ヶ月後、他界されてしまった。
敬愛すべきS先生、もっと多くの事を教えて欲しかった。
ただ、今は終ったと思いたい。

S先生のお葬式から二ヶ月が経った。
寂しさと、大切な人を亡くした喪失感も薄れ始め、俺は日常に戻っていた。
慌ただしい毎日の隙間に、ふとあの頃を思い出す時がある。
あまりにも日常からかけ離れ過ぎていて、本当に起きた事だったのか分からなくこともある。
こんな話を誰かにするわけもなく、またする必要もなく、ただ毎日を懸命に生きてくだけだ。



祖母から一通の手紙が来たのは、そんなごくごく当たり前の日常の中だった。
封を切ると、祖母からの手紙と、もう一つ手紙が出てきた。
祖母の手紙には、俺への言葉と共にこう書いてあった。
『S先生から渡されていた手紙です。
 四十九日も終わりましたので、S先生との約束通りTちゃんにお渡しします。』

S先生の手紙。

今となってはそこに書かれている言葉の真偽が確かめられないし、
そのままで書く事は俺には憚られるので、崩して書く。



Tちゃんへ
ご無沙汰しています。Sです。あれから大分経ったわねぇ。
もう大丈夫?怖い思いをしてなければいいのだけど…。

いけませんね、年をとると回りくどくなっちゃって。
今日はね、Tちゃんに謝りたくてお手紙を書いたの。
でも悪い事をした訳じゃ無いのよ。

あの時はしょうがなかったの。でも…、ごめんなさいね。

あの日、Tちゃんがウチに来た時、先生本当は凄く怖かったの。

だってTちゃんが連れていたのは、とてもじゃ無いけど先生の手に負えなかったから。
だけどTちゃん怯えてたでしょう?だから先生が怖がっちゃいけないって、そう思ったの。
本当の事を言うとね、いくら手を差し伸べても見向きもされないって事もあるの。あの時は、運が良かったのね。

Tちゃん、本山での生活はどうだった? 少しでも気が紛れたかしら?
Tちゃんと会う度に、先生まだ駄目よって言ったでしょう?覚えてる?
このまま帰ったら酷い事になるって思ったの。

だから、Tちゃんみたいな若い子には退屈だとは分かってたんだけど、帰らせられなかったのね。
先生、毎日お祈りしたんだけど、中々何処かへ行ってくれなくて。
でも、もう大丈夫なはずよ。近くにいなくなったみたいだから。

でもねTちゃん、もし…もしもまた辛い思いをしたら、すぐに本山に行きなさい。
あそこなら多分Tちゃんの方が強くなれるから、中々手を出せないはずよ。


S先生の手紙の続き


最後にね、ちゃんと教えておかないといけない事があるの。
あまりにも辛かったら、仏様に身を委ねなさい。

もう辛い事しか無くなってしまった時には、心を決めなさい。

決してTちゃんを死なせたい訳じゃないのよ。
でもね、もしもまだ終っていないとしたら、Tちゃんにとっては辛い時間が終らないって事なの。

Tちゃんも本山で何人もお会いしたでしょう?
本当に悪いモノはね、ゆっくりと時間をかけて苦しめるの。決して終らせないの。
苦しんでる姿を見て、ニンマリとほくそ笑みたいのね。
悔しいけど、先生達の力が及ばなくて、目の前で苦しんでいても何もしてあげられない事もあるの。
あの人達も助けてあげたいけど…、どうにも出来ない事が多くて…。

先生何とかTちゃんだけは助けたくて手を尽くしたんだけど、正直自信が持てないの。
気配は感じないし、いなくなったとも思うけど、まだ安心しちゃ駄目。
安心して気を弛めるのを待っているかも知れないから。
いい?Tちゃん。決して安心しきっては駄目よ。

いつも気を付けて、怪しい場所には近付かず、余計な事はしないでおきなさい。
先生を信じて。ね?

嘘ばかりついてごめんなさい。
信じてって言う方が虫が良すぎるのは分かっています。
それでも、最後まで仏様にお願いしていた事は信じてね。
Tちゃんが健やかに毎日を過ごせるよう、いつも祈ってます。

S



読みながら、手紙を持つ手が震えているのが分かる。
気持ちの悪い汗もかいている。鼓動が早まる一方だ。
一体、どうすればいい?まだ…、終っていないのか?
急にアイツが何処かから見ているような気がしてきた。
もう、逃れられないんじゃないか?

もしかしたら、隠れてただけで
その気になればいつでも俺の目の前に現れる事が出来るんじゃないか?
一度疑い始めたらもうどうしようもない。全てが疑わしく思えてくる。

S先生は、ひょっとしたらアイツに苦しめられたんじゃないか?
だから、こんな手紙を遺してくれたんじゃないか?
結局…、何も変わっていないんじゃないか?

林は、ひょっとしたらアイツに付きまとわれてしまったんじゃないか?
一体アイツに何を囁かれたんだ。
俺とは違うもっと直接的な事を言われて…、おかしくなったんじゃないか?

S先生は、俺を心配させないように嘘をついてくれたけど、
『嘘をつかなければならないほど』の事だったのか…。
結局、それが分かってるから、S先生は最後まで心配してたんじゃないのか?
疑えば疑うほど混乱してくる。どうしたらいいのかまるで分からない。


ここまでしか…俺が知っている事はない。
二年半に渡り、今でも終ったかどうか定かではない話の全てだ。
結局、理由も分からないし、都合よく解決できたり
何かを知ってる人がすぐそばにいるなんて事は無かった。
何処から得たか定かではない知識が招いたものなのか、
あるいは、それが何かしらの因果関係にあったのか…。
俺には全く理解できないし、偶々としか言えない。
でも、偶々にしてはあまりにも辛すぎる。

果たして、ここまで苦しむような罪を犯したのだろうか?犯していないだろう?
だとしたら…何でなんだ?不公平過ぎるだろう。それが正直な気持ちだ。

俺に言える事があるとしたらこれだけだ。
「何かに取り憑かれたり狙われたり付きまとわれたりしたら
 マジで洒落にならんことを改めて言っておく。
 最後まで、誰かが終ったって言ったとしても、気を抜いちゃ駄目だ」



そして…、最後の最後で申し訳ないが、俺には謝らなければいけない事があるんだ。
この話の中には小さな嘘が幾つもある。

これは多少なりとも分かり易くするためだったり
俺には分からない事もあっての事なので目をつぶって欲しい。

おかげで意味がよく分からない箇所も多かったと思う。合わせてお詫びとさせて欲しい。

ただ…、謝りたいのはそこじゃあない。

もっと、この話の成り立ちに関わる根本的な部分で俺は嘘をついている。
気付かなかったと思うし、気付かれないように気を付けた。
そうしなければ伝わらないと思ったから。
矛盾を感じる事もあるだろう。がっかりされてしまうかもしれない…。
でも、この話を誰かに知って欲しかった。





俺は○○だよ。

…今更悔やんでも悔やみきれない。

2012.01.21 Saturday

食べる。

759 :ウニ◆oJUBn2VTGE :2011/08/21(日) 00:17:47.93 ID:i1MYcoGY0

ウニです。次のお話は2010年の夏コミで同人誌に寄稿したものです。

すでに前から売り切れていたことと
1年が経過したことから、ネット上でも発表することにしました。
 
なお、先に某所に投稿していますが
2chでは1行の長さ規制のために不本意なところで改行をする羽目になったり
場面転換的なシーンがレス間に被ると
1行あけているのかそれとも繋がっているのか
分かりにくかったりといった不都合が多々あるため、
未編集のものをそちらに載せる形をとっています。


師匠から聞いた話だ。


一度どうして蜘蛛が嫌いなのか訊いたことがある。

加奈子さんはどうしても訊きたいのかともったいぶったあと
いや、後悔するぞとも言っていたような気がするが、ともかくあぐらをかいて語り始めた。

クーラーのない夜のアパートの一室は座っているだけで
じっとりと汗が浮かんできて、なんとも怪談を聞くのに相応しい雰囲気だった。

だからと言ってその話が怪談になる保障はなかったのであるが……


「子どものころにな、エグい蜘蛛の死骸を見てな。それ以来だめなんだ」
エグい、というのが気になるが、案外普通の話だ。

余計に暑くなって団扇を仰ぐ。


「近所にゴミ屋敷って呼ばれてる家があったんだけど
 そこに有名な変人のおじさんが住んでてな。

 いつも短パン穿いてて、上半身は垢じみたシャツ一枚。
 ニヤニヤ笑いながら用もないのにそのへんをぐるぐる歩いて回ってんの。

 仕事なんてしてなかったけど、母親の年金で食ってるって話。
 だけどかなり前から近所の人もその母親を見かけなくなってて

 実はとっくに死んでるのに死体を隠してるって噂があった。
 もちろん年金をもらいつづけるためだな。
 とにかく近所のコミュニティー内でも危険人物ナンバーワン。
 大人からは絶対ついていっちゃだめだって、きつく言われてた」


「……ついていったんですね」

「うん」

ありうる。おばあちゃんの死体を見つけるつもりだったに違いない。




「小学校三年生くらいだったかな。
 歩いてたおじさんを尾行してた時、いきなり振り向いて言ったんだよ。
 『うちにおいしい食べ物があるよ』」


「……ついていったんですね」

「うん」

ありうる。



わたしはおじさんの後をついていった。

大人が近くに居れば注意してくれたかも知れないけれど
平日の昼間だったから、誰とも行きあわなかった。

もった、もった、とマイペースで歩くおじさんの背中を見ながら
しばらく進むと例のゴミ屋敷にたどり着いた。

いったいいつから溜めているのか
黒いゴミ袋に入っているものから、入っていないなんだか
汚らしいものまでが庭にまであふれ出している。

周囲には異様な匂いが立ち込めていて
これでは死体があっても死臭など嗅ぎ分けられそうになかった。

そのゴミに惹かれて野良猫がうじゃうじゃ集まってきていて
その無数の瞳が一斉にこちらを睨んだ。

ただゴミを漁りにきていたわけではないようだった。
大小様々な皿に、キャットフードらしいものが散らばっていたからだ。

飼っているらしい。



中には何の肉だかわかんないようなものをくわえてこちらに唸っているヤツもいる。

「こっちだよ」と言いながらゴミを掻き分けて家の中に入っていくので
飛びかかられはしないかと猫に注意を払いながらついていった。

玄関には脱ぎ散らかした靴が何足かあり
半分はゴミの山の下敷きになっている。
おじさんが靴を脱いだので、生理的に脱ぎたくはなかったが
仕方なくスペースを見つけて慎重に靴を揃えた。




「こっち」




台所に行くのかと思ったが、廊下の途中に地下へ伸びる階段があり、そこで足を止めた。
靴下がいやにネトネト床に張り付いて気持ち悪い。

それでもおじさんが勝手に階段を降りていったのでついていくしかなかった。
降りていくときに気づいた。
猫の鳴き声が聞こえる。

家の外もニャーニャーうるさかったが、あきらかに地下からも聞こえていて
それも一匹や二匹じゃないうえに、なにか苦悶の声というのか
とにかく普通じゃない鳴き声だった。



階段を降りると薄暗い地下室に棚がたくさん並んでいる。
それぞれが天井にくっつくくらい背が高い。

その中にはわけがわからないものが詰め込まれていた。

ベビーカー。割れた三面鏡。古びた桶。ツルハシ。
石膏の地蔵。汚れた造花。暗号のような殴り書きをしてあるダンボール。
それに黒い布を被せてある鳥カゴのような形のものが何十と。

猫の異様な鳴き声はその黒い布の向こうから聞こえてきていた。



ついていってはいけない人ナンバーワンは伊達でないという実感がした。

そしてビン。

梅酒をつくるときに使うような大きさのビンが棚の下の方の列に並んでいて
黄色い天井の明かりに薄っすらと照らされている。
気持ちの悪い色をした中身が微かに見える。

おじさんがわたしの視線の先にあったひとつを取って
ニヤニヤしながら「食べる?」と訊いてきた。

最初茶色いお饅頭がぎっしり詰まってるのだと思った。

しかし一口サイズにしても妙に小さい。

大きさも形もまちまち。

おじさんが蓋を開けて赤ん坊のようにふっくらした指をつっこみ、一つを摘んでみせた。




なにかぬらぬらしていてそのくせ萎れかけている、茶色くて丸いもの。
おじさんはそれを口に放り込んでくちゃくちゃと音を立てた。

またビンに手を入れ、もう一つ取り出してわたしの口元に近づけてくる。




茶色いお饅頭の表面に変な模様と
うぶ毛みたいなものが見えた瞬間に分かった。分かってしまった。

あ、蜘蛛のお腹だ。

それも大きな蜘蛛の。

それが一抱えもあるビンの半分以上にみっしり詰まっている。




手を出さないわたしにニヤニヤ笑って、おじさんがまた自分の口に放り込む。
くちゃくちゃ。くちゃくちゃ……




「ちょっと待ってください」
話の途中で僕は手振りを交えて口を挟んだ。

空気。

空気を吸いたい。

いや、空気はある。窓の外の空気が吸いたい。




加奈子さんはそんな僕をバカにした目で見ている。
甘かった。この人のトラウマになったほどの出来事が
普通のよくある話なわけはなかった。




「続きがあるんだよ。まだわたしは逃げ出さなかったからな」

おじさんは小さい女の子の前で自分を全開でさらけ出して興奮したのか
目が爛々としてきて息遣いも荒くなった。
「でもこれじゃないんだ。これはあんまりおいしくないからね」
そうしてビンを戻すと、奥の方へ進み始めた。



黒い布のかかった鳥カゴのようなものの前を通り過ぎるとき
猫の呻き声が大きくなった。
立ち止まったままのわたしにおじさんがどうしたの? と訊く。
「ねこが」そう言うわたしに嬉しそうな顔をして口を開く。

歯にさっきの蜘蛛のお腹の一部がこびり付いているのが見えた。


「猫は化けるっていうけど、どんな風に化けるのか実験してみたんだ。
 色んなことをしたよ。そのうちに気がついたんだ。

 死ぬ前にね、変な鳴き声をあげる猫がいるんだ。五十匹に一匹くらい。

 どういう猫がそうなるのか
 まだ研究中なんだけど、とってもいい声で鳴くんだ。ホラ、こんな風に」

おじさんが手近な黒い布を取り払った。


その下にあったのは竹の骨組みだけの鳥かご。

空っぽの鳥かご。

なのに異様な気配が膨張していく。

鳴き声が止まらない。
わたしは思わずその右隣、その左隣、その上、その下と
息をのみながら棚に並ぶ黒い布を見つめる。




おじさんは嬉しそうに布を取り払っていく。

空だった。

すべて空。

なのにそのすべてから鳴き声が聞こえる。

呻くような声。慄くような声。耳を塞ぎたくなるような声が。




硬直するわたしにおじさんは
「さあ、猫はもういいだろう。おいしいものはこっちだよ」と奥へ進んでいく。
頭がぼんやりして、なんだか夢の中にいるみたいだった。ふらふらとついていく。

天井には等間隔に黄色い明かりが並んでいる。

やがて壁にあたり、角を曲がる。
また棚が両脇に伸びている。
少し狭くなったようだ。

一番奥には巨大な顔が見える。壁に描かれた絵だった。



おじさんがごそごそと腰を屈めていたかと思うと、汚らしいツボを抱えてきた。
さっきの蜘蛛のお腹が詰まったビンと同じくらいの大きさだ。
とても古そうだった。

丸くすぼまった口のところに釉薬が垂れたような模様がついている。
その口を縛っていた紐と布を、おじさんが慎重な手つきで解いていく。




「北に、車で一時間くらいいった町に、天狗の伝説があってね」
唐突にそんなことを言いはじめた。

「高い山があるんだけど、その山じゃなくて
 少し離れたところにある沼地にまつわる話なんだ」
なにが可笑しいのか、肩を小刻みに震わせながら、きききと耳障りな声を出す。

天狗? 頭の中に、赤い顔をして鼻が高く、山伏のような格好をした姿が浮かぶ。
手には葉っぱでできたウチワ。



おじさんは言う。
「山じゃなくて沼地で天狗っていうのが不思議だろう。
 古い神社があってね。
 そこに、昔々天から落っこちてきたという天狗を祀っているんだ。

 間抜けな話だろう? おっちょこちょいな天狗」

背中の小さな羽根でつむじ風に乗り
気持ちよさそうに空を飛んでいた天狗が
葉ウチワを落っことしてしまって追いかけているうちに
地面に墜落してしまうというイメージが浮かんだ。



「ところが……」
おじさんの声色が変わった。
ひそひそと重要な秘密を告げようとするみたいに声を落とす。



「その神社の口伝に、天狗を祀るようになった由来があるんだけど
 少し妙なんだ。こう言っている。
 『その傷つきたる姿、いかなる獣にも似ず、肌は青黒く、痩身、鳴き声は雉の如し』」
ニタリと笑っておじさんはわたしの反応を確かめる。

「お嬢ちゃんの知っている天狗と違うだろう? 

顔は赤くないし、一本歯のゲタのことも山伏姿のことも
そしてなにより高い鼻のことを言っていない。
それなのに『天狗』だとして祀られているんだ」

確かに不思議な気がした。



「その謎を解くには少し天狗のという存在の成り立ちを説明しないといけないね。
 天狗が今の姿になったのは鎌倉時代以降と言われている。

 山伏の姿を見ても分かるとおり、彼らは修験道の行者に代表される山の民の象徴だ。
 そして密教がさかんになった十一世紀以降、仏教の敵対者としての性質が付加されていく。
 国家と、それを守護する仏道にまつろわぬ孤高の存在。

 そして己の験力を誇示し、慢心の権化として密教に挑み、打ち負かされる存在。
 そうした仏教説話のアンチヒーローが彼らだ。
 それは密教自身が己の験力を誇示し
 鎮護仏教として確固たる地位を占めるための

 妖怪といういわばやられ役を割り振られた、あまたある日本古来の神々のひとつだよ」



おじさんの背後に本棚の中身が電球の明かりに薄っすらと浮かぶように見えた。
民話やお化けに関する本がぎっしりと詰まっているようだった。

ツボを胸の前で抱えたままおじさんは続ける。




「お嬢ちゃんは何歳? ……そう、かわいいねえ。
 『天狗』という字を書けるかな。
 天は天国の天。狗はケモノヘンに句読点の句と書くんだ。

 狐狗狸(コックリ)さんという遊びをしたことがあるかな。
 漢字で書くと、狐と狸でこの狗を挟んでいる。
 この狗はイヌという意味だね。野山や里で人を惑わせるケモノたち。

 ところでさっきの天狗を祀った神社なんだけど、実はとっても古い神社でね
 鎌倉幕府の成立より二百年以上前に建てられている。平安時代だ。
 つまり天狗が今の姿になる前だね。

 じゃあ慢心して鼻が高くなる前の天狗の姿はどうだっただろう。
 ただの山伏?いいや、天狗は修験道の成立よりもっともっと古いモノだ。
 日本の神話をつづった日本書紀というものを聞いたことがあるかな。
 平安時代よりさらに昔の、奈良時代にできた本だよ。
 その中にね、天狗について触れたくだりがある。

 ……あるとき東の空から大きな音を立てて星が落ちてきた。
 人々は驚き、流星だ流星だと騒いだ。しかしある法師はこう言った。
       『流星ニ非ズ。是レ天狗ナリ』」  



背後から聞こえる猫の鳴き声が大きくなった。



ビクリとしてわたしは首を竦める。



テングという滑稽な言葉の響きが
ぐわぐわとなにか得体の知れないものに変わっていくような気がした。



「天に長大な尾を引いて流れる火の球。
 ただの流れ星ではなく、人間にとってなにか重大な意味を持つ兆し。
 天を翔ける狗(キツネ)。天狗(アマキツネ)だよ」

おじさんはそう言いながらツボの表面を撫でる。



「狗(ク)という字はね、キツネとも読むんだ。
 とっても古い読み方だね。でもこの天狗は日本で生まれたものじゃない。
 中国の古い書物にもその姿が見える。

 紀元前にできた『山海経(せんがいきょう)』という本には
 天狗の正体は火の球である、とでている。
 『史記』では、流星のようだが、地上に降りては狗(キツネ)に似ていて、炎を発するとしている。

 ……どうかな。鼻が高い赤ら顔の山伏と全然違うだろう。
 日本には天狗神社という神社がたくさんあるけど
 そこに祀られている天狗は猿田彦という神様の分霊だよ。
 鼻の高い神様だ。その鼻の高いところが鎌倉期以降の天狗に通じるから同一視されたんだね。
 

 酷い話だ。慢心で鼻の伸びた仏教のカタキ役が神道の神様になっちゃった。
 元はといえばキツネが化けていたんだよ」

大げさな抑揚で言う。

ジジジ……と電球が嫌な音を立てる。おじさんが一歩前に出た。思わず一歩下がる。




「でも、本当はキツネでもないんだ。
 キツネに似ている流星のような火の球なんだから。
 ハレー彗星を知ってるかな。もう少ししたら地球にやってくる彗星だ。

 別名、天狗星とも言うよ。彗星や流星全般をさす言葉でもある。ここに昔の名残があるね。
 それから『五雑俎』という古い中国の本がある。
 五つの雑なマナ板という字をあてる本だ。
 そこでは天狗星が落ちたあとに見つかるケモノを『天狗』と称している」




おじさんが目を輝かせてまた一歩前に出た。ごくりと唾を飲みながらまた一歩下がる。



「分かってきたかな。ボクのいいたいことが。
 沼に落ちたという天狗を祀っていた神社の口伝はこう言っていたね。

 『その姿、いかなる獣にも似ず』って。つまりなんだか分からないと言ってるんだ。
 だからこれは次々と変化していく
 そんな『天狗』という言葉のイメージに塗り重ねられた寓話的存在ではなく
 真実の姿を描写しているのではないか。と、そう思うんだよ」

想像してごらん。
おじさんは静かに言った。

「千年以上昔の素朴な農村の外れ。
 沼がちな土地に、あるとき静寂を破って天を切り裂く光が降り注いだ」
薄暗い地下室の天井に光が走った気がした。



「轟音とともに巨大な火の球が降ってくるんだ。
 恐ろしい天変地異に粗末な麻の服を着た村人は逃げ惑った。
 やがて火の球は地上に激突し、地面を抉り、沼の水を一瞬で蒸発させ
 荒ぶるキツネ火のように炎が大地を這い回った。

 そしていつしか炎は消え、人々が恐る恐る近づいていくと
 地形が変わるほどの途方もない衝撃があったことを示す痕跡の中に
 火の球の残骸のようなものが散らばっている。その中に人々は傷ついた獣の姿を見た。

 肌は青黒く、痩せていて、鳴き声は雉のようだった。
 得体の知れない獣を捕らえた人々は在郷の有識者階級であった神社の宮司に問うた。
 これは一体なんであるか、と。宮司は神話になぞらえて言った。
 『流星ニ非ズ、是レ天狗(アマキツネ)ナリ』」



そして……



おじさんはツボに視線を落とす。ザラザラした膨らみをゆっくりと撫でている。



「空から、火を吹く球に乗って落ちてきた異邦の生物は
 村の人々によって塩漬けにされた。

 どうして保存しようとしたか、それは分からない。

 塩漬けにされた生物の身体はその神社に祀られ、代々の宮司に受け継がれる。
 年月が経ち、やがて人魚の肉の伝説のように
 その肉を食すれば身の内に霊力が宿るという噂が生まれた。
 それを聞きつけた土地の領主に一部が献上されたこともあったそうだよ。

 鎌倉、室町、江戸、明治と時代は下り、アマキツネはテングになり
 やがてこの天狗の肉は宮司一族と一部の氏子衆だけが知る
 秘密の御神体として口伝で継承されてきた。

 僕がどうやってそれを手に入れたかは秘密だよ」



紐を取り払い、ツボの口を覆う布をそろそろとずらしていく。
わたしはそのツボから視線を逸らすことができない。





「日本の神話や民話には
 妖怪や鬼神などの恐るべき力を持った存在を食することで
 その力を取り込むという話がいくつか見られる。

 それ自体はさほど珍しいものじゃない。
 
 でもね。

 この天狗の肉を食べることで身の内に宿る霊力とされるのは
 人魚の肉と同じく不老長寿の力だというんだ。

 ここが面白いところでね。

 古今、天狗の肉を食して不老長寿を得るという伝説はほとんど聞かない。
 そもそも天狗は人魚よりもはるかに恐ろしい力を持つ存在だ。

 天狗だおし、天狗つぶて、天狗さらい、天狗わらい…… 
 人知の及ばない怪異の象徴である天狗を打ち倒し
 食するという発想がそもそもないんだ。
 天敵の密教坊主は戒律で肉食ができないしね。
 
 ところが、この神社に祀られる天狗は
 そんな後世の天狗ではなく、本当はアマキツネだ。
 如何なる獣にも似ず、雉のような声を発する生物。

 天狗だからこういう姿で現れたわけではなく
 こういう現れ方をしたからアマキツネと呼ばれた。これは演繹法ではなく、帰納法だよ」


なんだかわけがわからなくなり、ドキドキしているわたしにおじさんは笑いかけた。

「さあ。約束のおいしい食べ物だよ」

そう言って布を取り、ツボの中に片方の手を突っ込む。
そして肉がブツリと千切れる微かな音が聞こえた。

ツボから引き抜かれたその指先に、どす黒いなにかが摘まれている。
差し出されたそれを正視できず、思わず顔を背けた。

「大丈夫だよ。古くたってしっかりと塩漬けされてるから
 まだ食べられるよ。塩辛いけど」

そう言っておじさんは自分の口元に指を這わせ、肉片のようなものを噛んだ。
クチャクチャと、わたしにも聞こえるように。



その瞬間、ぶるぶるとおじさんの顔全体に細かい痙攣が走った。
ほんの数秒だったが、その間おじさんの目玉も小刻みに動いたのが見えた。

「こんなに、おいしいのに」

顔の痙攣が止まっても目玉はあっちこっちに動き続けている。
わたしはどうしようもなく怖くなり、後ずさる。



「話が途中だったね。帰納法。帰納法なんだよ。
 天狗の肉だから不老長寿なんじゃない。

 宮司たちの観察の結果、この肉を食べれば不老長寿が得られると、そう思われたんだ」
 
目玉は震えているけれど、おじさんの声はしっかりしていた。

ただ途方もない狂気を孕んで。

後ずさるだけ、近寄ってくる。ツボを抱えたまま。


「フレイザーの言う類感呪術だよ。
 類似したものには類似した力が宿る。
 観察だ。観察されたんだ。帰納法なんだ。
 
 類似したものは相互に影響を及ぼしあう。

 夫婦仲を良くしたければ、オシドリを食すればいい。

 子宝に恵まれたければ、子宝に恵まれた女性を食すればいい。
 
 食べることはもっとも原初的で純粋な呪術だ」


じりじりと近づいてくる。
ツボにもう一度片手が差し入れられる。

ぶつり。
肉が千切れる嫌な音。頭がかってにその音を何度も何度も再生する。

黒いもの。
嫌なもの。
恐ろしいものが、その指に握られている。



差し出されるそれを避けようと仰け反るが
硬いものが背中に当たる。

本棚でコの字型に囲われた窪みにわたしはいた。
奥の本棚に背中を押し当て、それ以上下がれない私は
どうしようどうしようと、そればかり頭の中で繰り返していた。




そして、その時、聞いてしまったのだ。
おじさんの腕に抱えられたツボの中から。



Ku…………

小さな、うめき声を。

2012.01.21 Saturday

生きてきた中で一番恐ろしかった出来事

 
62 : あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/02/27 23:32

厨房の頃の事。
学校の帰り道にて。

我が家の前には車一台分しか無い幅の坂道があって、
そこにさしかかったあたりで、前方からバンが来た。

そのバンはやたらゆっくり走っていて、
「なんだろう気持ち悪い」と思って見てみたら、
中に5,6人男が乗っていて、その全員がジッと私を見ていた。

その顔は、「ああ、日本人じゃないな」とわかる程度のアジア顔。
なんだかものすごい恐ろしくて、少し足早に通り過ぎた所、
バンから男が一人降りて私の方に走って来た。

「えっ何なになになに!!!??」とびびっていると、

バンの後ろから一台坂道を通りたいらしき車が来た。
それを見た男はまた一目散にバンに戻り、そのまま発車して行ってしまった。

どこのどなたか知らないが、たまたま通りかかってくれてありがとう。

なんだかものすごく怖くて走って家に帰って泣きながら友達に電話した。
あれは本当に怖かった。まさか拉致じゃないよなぁ…うち太平洋側だし…。
あれ以来そのような人たちは見ません。
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